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イワシが高級魚になるケース――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』65回めです。

今日は六本木SLOW PLAYで書いてます。

※⇒前回「気づきましたか」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
杉ちゃん(杉) ITベンチャー社長。ヒットアプリ「アリファン」を運営
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略

〈第65回 巨悪〉
アリファンカンパニー 会議室

「ところで、当日はみんなどうするの? 電車? タクシー?」

A「主幹事証券会社のトレーディングルームに午前8時に集合ですので、そこらへんは各自ビルの前で現地集合できればと」

「りょ。やっぱりスーツ?」

A「そうですね。そのほうが」

「わかりました。あとなんか必要なものありますか?」

A「必要なものというわけではないんですが、当日株価が過熱した場合には、手持ちの株式をある程度売却する予定でいます。いわゆる【冷やし】と呼ばれるものですが、あまり上がりすぎるのもよくないので水をパシャパシャかけるように価格を一定に保つんです」

「へー。高ければ高いほうがいいんじゃないの?」

A「売買が成立しないまま価格だけ上がっていくと、一度下げ始めたら止まるところがありません。往路で取引の少なかった価格帯はそのまま空白域になって、株価を一気に下げるんです」

「さすが。証券会社出身。ひとまわり年上」

A「おそれいります」

「ま、そこらへんのバランスはお任せします。とりあえず売り出し分の使いみちもまだなにも決まってないくらいだから、【冷やし】が必要であれば適切なタイミングで、よろしく」

A「かしこまりました」

「あ、そうだ。その冷やしって、僕の持ち株からも売る必要ありますか?」

A「いえ。代表者自身の株式は6か月間売れません」

「そうだった。まぁいいや。業績上げたらいいんでしょ」

A「そうです。業績上げてたら多少売却しても文句を言われることはありません」

「わかりました。しっかしそれにしても……」

A「はい?」

「不自由なもんですね」

A「あーーー、気づきましたか」

「えぇ」

同日午後 久里浜美琴宅

「犯罪捜査の現場では…科学こそが神であり…神は万能でなくてはならない」

「…」
「クハー」

「クハーじゃないでしょ。あなたもカテゴリー的には神さまでしょ」
「エェ…」

「でもカッコいいわー。わたしも科捜研に就職したかったわー」

「ワカル」

「ねー。それで何かしら巨悪をあばくの。きょあく?んー。別におっきくなくてもいいんだけど、あばくの」

「エェ」

「でもいまの世の中の悪ってなにかしらね。俺俺サギとか?」

「ンー。ソウネ」

「ちょっと組織的なのは怖いわねぇ…」

「ウン」

「でもさ、ウチの店にくるお客さんってなにで儲けてるのかしら。座って、飲んで1時間くらいで4まんえんとか5まんえん払うんでしょ。どうやったらそんなお金の使い方ができるようになるのかしらね」

「ネ」

「こんど…誰かおきゃくさんに聞いてみようか…」

「ソウシヨウ…」


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同日22:15 蒲田 スナック座礁

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