ファーナスの“ノックスビルの休日”――フミ斎藤のプロレス読本#034【全日本プロレスgaijin編エピソード4】
大学を卒業してパワーリフティングで生計を立てるようになったファーナスは、スクワット985ポンドの大会レコードをはじめ、合計29個の世界記録をつくり、全米のプロ・コンテストに出場するようになったが、住み慣れたノックスビルを離れることはなかった。
「ノックスビルの町には、フットボール・シーズンの最初の公式試合の朝みたいな、なんだかわくわくするような、じっとしていられないような空気があるんだ。たぶん、口でいくら説明してもわかってもらえないかもしれないけれど、朝起きて、ベッドルームの窓を開けて外をながめると、なんだか元気が出てくるみたいな、そんな気持ちになるんだ」
オクラホマの農場育ちのファーナスには、日本でのツアー生活がひじょうにテンポの速いものに感じられるのだという。ノックスビルの田園風景と東京の都市空間とではあまりにも視覚的な落差が大きい。
だからこそ、全日本プロレスのリングに上がっているときは心身ともにプロレスのことだけに集中できるのだろう。
「シリーズが終わってノックスビルに戻ってきた翌朝は、大学のキャンパスのまわりをひとりでゆっくり散歩することにしているんだ。1カ月近くも家を空けていると、木々の色がすっかり変わったりしていることがあるんだ」
全日本プロレスでのタッグ・パートナー、ダニー・クロファットが遠くカナダのモントリオールに住んでいるのも仕事とプライベートをきっちりと区別するのに役立っている。
ノックスビルにはレスラー仲間はほとんど住んでいない。だから、行きつけのジムでいっしょにワークアウトをするのは顔見知りの地元の若者ばかりだ。この気どりのなさがファーナスにとってはこのうえなく心地よい。
「日本に行く1週間くらいまえになると、フィリップ(クロファットの本名)に電話をかけて次のツアーについていろいろな話し合いをすることにしている。彼もオレもそうすることでシリーズへ向けてのテンションを高めるように心がけているんだ」
次期シリーズは4週間のロング・ツアー。ファーナスがまたノックスビルに帰ってくるころにはテネシー大学のキャンパスの芝生が緑色に変わっているだろう――。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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