ダグ・ファーナスの野心――フミ斎藤のプロレス読本#035【全日本プロレスgaijin編エピソード5】
もともと、ファーナスがダニー・クロファットと本格的にタッグを組んだのはダイナマイト・キッド&デイビーボーイのコンビと闘うためだった。
ファーナスはこの試合の企画案をホテルの便せんに手書きでしたため、全日本プロレスのフロントに提出し、ジャイアント馬場が「それはおもしろい」と返答したため、ブリティッシュ・ブルドッグス対カンナム・エキスプレスのタッグマッチが全日本プロレスの定番カードになった。
フロファットとのコンビがだんだんとタッグチームらしくなってくると、こんどはふたりで――マスクマンに変身して――メキシコに行くことを思いついた。メキシコ・マットではアメリカ人レスラーはことのほか優遇される。
遠征先のUWAでVIP待遇を受けたのはうれしい誤算だったが、それよりもメキシコのリングで新しいライバル・チーム、ロス・カウボーイズ(エル・テハノ&シルバー・キング)を発掘できたことが大きな収穫だった。
ファーナスは、スタン・ハンセンをじっくり観察しながら、みずからの3年後、5年後のイメージをプログラミングしている。クロファットとのタッグチームはあと数年はつづくだろう。
3年くらいをひとつのサイクルとしてとらえ、そのときそのときのライバルをみつけて“連続ドラマ”をひとつひとつプロデュースしていく。
だから、中堅クラスの定位置はそれほど悲観的にはとらえていない。カンナム・エキスプレスとしてひとつのピリオドをつくり、やがてシングルプレーヤーに転向し、そこでも何人かのライバルとの闘いをクリエイトしていく。
ファーナスにとって好都合なのは“ダグ・ファーナス”がどれくらい野心を持ったプロレスラーであるかを――レスラー仲間にも、ファンにも――あまり悟られていないことだ。
「いまは隠れていたほうがいい」とファーナスは小声でささやいた。そんなことをいわれると、こっちはかえってその動きに敏感になってしまうのである。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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