クルマやファッションでわかりやすくカネ持ちアピールする男が人気だった【80年代モテ男論】
クリスマスは食事+ホテル+プレゼントで、合計15万円かけるのは当たり前、みたいな流れが生まれたわけですね。
マイケル:僕はバブル時代、ジュエリーの問屋をしている友だちから、号数違いの同じ指輪を大量買いして、クリスマスのときは複数の女のコに配りまくっていた。それこそカクテルやシャンパンの中に指輪を入れて(笑)。
ゴメス:なんですか、それ!? そんなのトレンディドラマ(※6)でしか見たことない!
マイケル:そりゃあ、数打ちゃ当たる作戦だったから。もちろん、寸前で逃げられちゃうケースもたくさんあったけど、それでもいいのかなって思ってた。いろいろ反省することもあったけど、プロセスだけでワクワクできたじゃない? アッシー君でもメッシー君でも別にかまわない(※7)と、自然に割り切れる不思議な時代だった。昔はキレイなコと一緒に食事できただけで超ハッピー。見返りなんて発想は、ほとんどなかったよね。
ゴメス:アタックして撃沈しても、また行って。今のコのように、コスパやリスクに縛られていたら、なかなかできない”蛮行“でしたね。最近は、失敗を繰り返すなら家でじっとしてたほうがよっぽどマシ、みたいな感じでしょ。
石原:時代背景にかかわらず、社会人になりたてのころって、少し経済的な余裕が出てくると、高い買い物や食事をしたくなる時期ってありますよね。そういった”ささやかな衝動“が国家レベルの規模でくすぶりはじめたのが”バブル前夜“の80年代半ばだった。ある意味、万人が「ナポリタン以外のイタメシを食べてみたい」という願望を抱ける幸せな時代だったのかもしれません。その後、国全体が成り金状態となり、「お金を使いたくて仕方がない!」という空気が蔓延して、弾けてしまったんですけど(笑)。
マイケル:でも結局、みんなこうやって生き残っているわけだから、問題ないよね!
ゴメス・石原:確かに問題ないですね(笑)。
(※1)メイクしている男
デビッド・ボウイとか安全地帯(玉置浩二)とかの影響だった!?
(※2)テクノカット
テクノカットは、もみあげを鋭角に剃り整え、襟足を刈り上げた髪形で、80年代に大流行。当時のテクノ系ミュージックの代表格YMOがしていたことからテクノカットと呼ばれた
(※3)トラッドやアイビー、ハマトラ
トラッドにはイギリス伝統のスーツスタイルが基本のブリティッシュ・トラッドと、アメリカの合理的な考え方が基本のアメリカン・トラッドがある。アイビーは、アメリカ東海岸の名門私立大学グループ「アイビー・リーグ」の学生の間で広まっていたファッションが日本で定着したもの。三つボタンのブレザーやローファーが象徴的なアイテムだった。ハマトラは横浜トラディショナルの略で、元町商店街に本店を構えるブランドが定番だった
(※4)ソデが皮製か布製か
ソデ部分が皮製だと、布製の倍近くに価格が跳ね上がった。予算の少ないテニスサークルはナイロン製のペラペラなスタジャンをつくっていた
(※5)私服やヒゲが許されるサラリーマン
主にマスコミ関係者とアパレル関係者。外資系のサラリーマンとかは天然記念物モノの珍しさだった
(※6)トレンディドラマ
バブル時代に制作されたテレビドラマの一部を指すが、明確な定義はない。なんとなく都会っぽい男女の恋愛をトレンディに描いたドラマのこと
(※7)アッシー君でもメッシー君でも別にかまわない
いずれもキープ君の一種。キープ君とは、女性にとって恋人や恋愛対象としての本命ではないが交友関係を維持している男性のことで、クルマ送迎担当のアッシー君、食事代肩代わり担当のメッシー君など、便利屋としての側面があったとともに、恋人候補でもあった
【マイケル富岡】
1961年米国ニューヨークでアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれる。ハイスクールの頃から、モデルとして活動。1985年「MTV」のVJに起用される。音楽分野のほか多くのバラエティ番組で活躍する一方、NHK大河ドラマ『信長』に明智光秀役で出演するなどマルチタレントとしても活動。イベント司会など広い分野で活躍する
【山田ゴメス】
1962年大阪府生まれ。ライター&イラストレーター。画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション、音楽、美術評論まで精通。『日刊SPA!』でゴメス記者として多視的なコラムを配信中。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)、『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)
【石原壮一郎】
1963年三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。『大人の女養成講座』『大人力検定』『大人の合コン力』などなど、大人をテーマにした著書を多く発表し、メディアで活躍。日本の大人シーンを牽引している。「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める
構成/80’s青春男大百科編集部 撮影/林紘輝(本誌) ヘアメイク/久野友子
石原:そんな彼らがお手本となり、バブルを迎えて、1
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『80's青春男大百科』 マイケル富岡、向谷実ほか80年代を象徴する人物たちの貴重な証言。さらにはカルチャー、アイテム、ガジェットで、世の中がバブル景気に突入する直前のあの時代を振り返る! |
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