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WWE日本公演“マニア・ツアー”――フミ斎藤のプロレス読本#061【WWEマニア・ツアー編エピソード1】

「ヘイ、キーッ、もうメシは食ったか? ちょっと外へ出ようや」  ショーンの部屋にバンバン・ビガロから電話が入った。ビガロも、トーキョーに来るのは1年半ぶりだ。新日本プロレスをホームリングにしていたころは1年のうちの3分の1くらい日本で生活していた。  WWE所属になってからは1年を通して全米ツアーのスケジュールに追われるようになったから、やっぱりトーキョーからは足が遠のいた。今回のワールド・ツアーはなかったら、あと何年かは日本に戻ってくることもなかっただろう。  ショーンとビガロは、30分後に1階のロビーで待ち合わせをした。  ビガロはトーキョーをよく知っている。溜池のホテルから六本木までは歩いてもそれほどの距離ではないが、ビガロは「どうせ6ドルだろ」といって、ロビーから外に出たところでタクシーに乗り込んだ。 「ちがうよ、シックス・ハンドレッド・イェーン600yenだよ」  ショーンは、小銭をたくさん放り込んでおいたジーンズのポケットをたたいて笑った。1円玉から1万円札まできっちり日本円の区別ができるのがショーンの自慢だ。  六本木交差点からほんの少しだけ東京タワー方面に向かい、ひとつめの信号のところにあるロア・ビルの前にきたところでふたりはタクシーを降りた。  久しぶりに目にする六本木の風景は、以前とそれほど変わっていなかった。ショーンは「“ハードロック・カフェ”でなにか食べよう」といったが、ビガロは「まず一杯やってから」と返事して、ドーナツ屋さん――いまはラーメン屋になっている――のすぐよこにあるスタンド・バー“ミストラル”に入っていった。 「メシ食い終わったら戻ってこいよ。オレはここにいるから」
斎藤文彦

斎藤文彦

 ビガロは、まず行きつけの酒場で顔見知りのバーテンダーとおしゃべりをしながらビールを飲むつもりだった。六本木だったら、どこへ行ってもよくしてもらえるのだ。(つづく) ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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