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ブレットとミスター・ヒトの再会――フミ斎藤のプロレス読本#064【WWEマニア・ツアー編エピソード4】

 カルガリーのスタンピード・レスリングの本拠地パビリオンのリングで安達さんにレスリングを教わっていたころのブレットは、まだ学生っぽさが抜けない21歳で、いちばん下の弟――やがて“カルガリーの天才”と呼ばれることになる――オーエンはまだ中学生。安達さんは、昭和天皇ヒロヒトの“ヒト”を拝借したミスター・ヒト様だった。  “ゆき”の店内のあちこちにはカルガリーの香りがちょっとずつ散りばめられていた。いちばん奥のテーブルの上に無造作に置かれたアルバムのなかには、1988年のカルガリー冬季オリンピックのころの写真がきれいに収められていた。  スピードスケートの銅メダリスト、黒岩彰選手のプライベート・フォトがあったり、橋本真也とリッキー・フジと笹崎伸司のめずらしいスリーショットなんかもある。たぶん、安達さんご夫婦の心はまだ半分くらいはカルガリーのほうを向いている。  ミスター・ヒトとしてやり残したことがあるとしたら、それは日本のリングでちゃんとした引退試合をやっていないことだ。  安達さんがリングのまんなかに立って10カウントのゴングが鳴らされるときは、かつて安達さんにお世話になった何10人もの日本人レスラーたちがそこに集い、北国カルガリーの同窓会になるだろう。でも、いまのところその予定はない。  安達さんは、まだまだしゃべりたいことは山ほどあるという顔をしていた。
斎藤文彦

斎藤文彦

 ブレットは、また静かにほほ笑んだ――。(つづく) ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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