“ふたりの相撲レスラー”ヨコヅナと小錦の再会――フミ斎藤のプロレス読本#062【WWEマニア・ツアー編エピソード2】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
ショーン・ウォルトマンが階段を上がって“ハードロック・カフェ”のドアを開けると、店の奥のほうの大きなテーブル席に見慣れた顔が何人か座っているのがみえた。
ヨコヅナ、サムー、タタンカ、ドインク。スーパーヘビー級のボーイズがみんなで仲よくきゅうくつそうにテーブルを囲み、チーズバーガーをほおばっていた。
ショーンは、ウェートレスさんに合図をして、みんなが座っているテーブルのとなりに席を用意してもらった。
ヨコヅナとサムーはイトコ同士で、ヨコヅナはグレート・コキーナのリングネームで、サムーはワイルド・サモアンの名でかつては新日本プロレスのレギュラー“ガイジン組”だった。
新日本プロレスの外国人選手担当のタイガー服部レフェリーは、サモアン・コンビを「田舎のプレスリーだよ。地方に行くとあいつらの試合、バカ受けする」と話していた。ふたりとも巨漢だけど動きがよくて、ゴムボールが弾むようなみごとな受け身をとる、いわゆるバンプの達人である。
タタンカとドインクはトーキョーは初めてなので、ヨコヅナたちにくっついていないとどうにもならない。いくら六本木は外国人が多い街といっても、体の大きなプロレスラーたちはやっぱり目立つ。
食事をしているあいだじゅう、レストランのなかにいたほかのお客さんたちが彼らのサインをもらいに来た。
だれもショーンにはサインをねだらない。洗いざらしのフラネルのシャツを着て、ベースボール・キャップをかぶったショーンは、たぶんフツーのアメリカ人にしかみえない。ヨコヅナあたりとくらべると体もまだ貧弱だ。
でも、レストランやお酒を飲む場所でまわりの人たちからチヤホヤされなくても、そういうことはあまり気にならない。ショーンは、つい数年まえまではサインをもらう側だった。
「YO、キッード、これから飲みに行くけど、いっしょに来るか?」
ヨコヅナの声は、超巨体に似合わずちょっと甲高い。
「飲みに行くって、もう飲んでるじゃない」
「コニシキーが迎えに来るんだ」
「だれ Who?」
「コニシキー。スモウ・レスラーの」
ヨコヅナと大相撲の小錦は友だちだった。トーキョーに着いてからヨコヅナが小錦の携帯電話を鳴らしてみたら、すぐに連絡がついたのだという。
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