スーパー・レザーのねぐらは池袋のビジネスホテル――フミ斎藤のプロレス読本#095【Tokyoガイジン編エピソード05】
30代のまんなかを過ぎたあたりからリングに上がることへの執着が強くなった。あと何年くらいこれをつづけることができるんだろう、なんて考えるときがある。
“レザーフェイス”のコスチュームはすべてお手製。ハロウィン・ショップで売っている怪物マスクの内側にコットンの黒マスクを縫いつけて、外側にはドレッド・ヘアがのっかる。
この3点セットをうまく縫い合わせないとちょうどいいかつらにならない。“お顔”ができあがったら、怪物マスクの表面に本物の血(自分の血)を数滴落として、乾かす。
“レザーフェイス”のマスクの下からのぞいているのはTOKYOガイジン、マイクの瞳である。スーパー・レザーに変身するのは1日のなかのごくわずかな時間だけれど、スーパー・レザーについて考えている時間そのものは長い。
あしたはどうやってチェーン・ソーをふりまわしてやろうかとか、トップロープからの雪崩式パワーボムで相手の体もろともテーブルをまっぷたつにぶっ壊すのはどうかとか、そんなようなことを頭のなかでイメージしながら池袋の西一番街通りあたりをほっつき歩く。
日曜がオフの日は、山手線で目黒まで行って“リベラ”で1ポンド・ステーキを食べ、それからそのへんをぶらっと一周してホテルに帰ってくれば、オールジャパン・プロレスリング(全日本プロレス)のTVショーの時間になる。
ビールが飲みたくなったら、コンビニはひと晩じゅう開いている。テレビの画面のなかでは、スティーブ・ウィリアムスがデンジャラス・バックドロップでジャパニーズ・レスラーをぶん投げていた。
窓の外にみえるのは、すぐとなりのビルのコンクリートの壁だけだ――。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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