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キーワードは“リスペクト”グラジとボウダーの友情――フミ斎藤のプロレス読本#094【Tokyoガイジン編エピソード04】

キーワードは“リスペクト”グラジとボウダーの友情――フミ斎藤のプロレス読本#094【Tokyoガイジン編エピソード04】

『フミ斎藤のプロレス読本』#094 TOKYOガイジン編wピソード4は、FMWのリングを選択したザ・グラジエーターとホーレス・ボウダーの友情ストーリー(PhotoCredit: Bill Otten)

 199X年

 ザ・グラジエーターとホーレス・ボウダーはイトコ同士である。グラジのお父さんとボウダーのお母さんが兄妹だから、ふたりはファースト・カズンだ。

 ボウダーの親父さんのほうはハルク・ホーガンのじつの兄で、ボウダーからみればホーガンは叔父さん、ホーガンからみればボウダーは甥っ子ということになる。

 アメリカでいちばんビッグなスーパースターである叔父のそばでちいさくなっているのと、同い年くらいのイトコとわーわーやっているのとではどちらがいいかといえば、それはイトコといっしょにいたほうが楽しいに決まってる。ボウダーは、いつもはるか遠くからホーガンを眺めている。

 ボウダーがプロレスをやろうと思ったのは偉大なる叔父のようになりたかったからというわけではない。グラジとボウダーは、10代の終わりごろからふたりでいっしょにプロレスラーになる計画を練っていた。

 ホーガンは「やれ」」とも「やるな」ともいわなかったけれど、ボウダーは叔父が自分の素質をそれほど高く評価していないことをはじめから知っていた。イトコのグラジは、ぐずぐずしているボウダーを置いてきぼりにしてさっさとレスラーになった。

 グラジとボウダーは、プロレスラーがプロレスラーらしい生活をすることができないアメリカのレスリング・ビジネスの現実にちょっぴり失望した。あんなに広いアメリカ合衆国にちゃんとした就職先がたった“2社”しかない。でも、WWEにもWCWにもそれほど魅力は感じない。

 ホーガンに頭を下げればWCWには入れてもらえるかもしれないけれど、もしそうしたとしても、けっきょくはブルータス・ビーフケーキのそのまた下の子分くらいにしかなれない。ふたりはどこか遠いところで、だれも知り合いがいない土地でプロレスがやりたいと考えた。

 ビデオでしか観たことがないジャパニース・レスリング。あの画面のなかに自分たちがいたらどんなにエキサイティングだろう。グラジは地元フロリダの先輩レスラーから「デビューしたらパスポートを取っておけ」とアドバイスされたことがあった。

 FMW(フロンティア・マーシャルアーツ・レスリングFrontier Martial Arts Wrestling)は大仁田厚のカンパニー。オールジャパン・プロレスリング(全日本プロレス)でもニュージャパン・プロレスリング(新日本プロレス)でもないジャパニーズ・レスリング・カンパニー。

 日本のレスリング・ビジネスのマーケット事情についてはそれほどくわしくはなかったけれど、とにかく自分たちを使ってくれるカンパニーがあって、「Yes, 行きます!」と返事をすればほんとうに地球の反対側まで飛んでいってプロレスができる。そういうオファーが目のまえに現れた。

 グラジもボウダーも――大げさにいっちゃえば――これを運命ととらえた。

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ミスター大仁田のプロレスは血だらけになるものだった

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