マスクを脱いでもマイクは“レザーフェイス”――フミ斎藤のプロレス読本#100【Tokyoガイジン編エピソード10】
マイク・カーシュナーは、アメリカのレスリング・シーンの情報の網からこぼれ落ちて、気がついたらトーキョーに漂着していたプロレスラーである。
グリーンベレーと迷彩パンツと星条旗がリングコスチュームだったころのキャラクターは“コーポラル(伍長)”だった。WWE在籍時代は“レッスルマニア2”に出場した。暗くて長いトンネルに迷い込んだら、出口のところにレザーフェイスが立っていた。
ちょっと遅めの夕食は、駅の反対側のチキン・プレイス(焼き鳥屋さん)がいい。「ジャパニーズ・ピープルは毎晩、お酒を飲みながらゆっくりディナーを食べるんだ」「お酒を飲まない人はすぐにライスを食べるね」「同じテーブルに5人で座ったら、自分がなにを注文したかに関係なくチェックは“5等分”にして支払うこと」「それがいやだったら、はじめに“ベツベツ”と断っておくんだ」
マイクはトーキョーの生活のなかで身につけたこの街の常識のようなもの――正しいルールもそうでもないものも含めて――をティーナさんに話して聞かせた。
携帯電話を持って歩いているのは、その番号に電話をかけてきてくれるローカルの友だちがいるということである。フォートローダーデールにはフォートローダーデールの生活があって、トーキョーにはトーキョーの日常がある。
マイクの右腕には“レザーフェイス”のタトゥーがあって、素顔スーパー・レザーには素顔のスーパー・レザーの家族がいる。ティーナさんはマイクが愛している街トーキョーのことをもっともっとよく知りたいようだった。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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