マスクを脱いでもマイクは“レザーフェイス”――フミ斎藤のプロレス読本#100【Tokyoガイジン編エピソード10】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
マイク・カーシュナーの右腕の前腕部の裏側には“レザーフェイス”というカタカナのタトゥーが彫られている。
タトゥー・アーティストの友人が日本のマガジンをみながら模写したおっかなびっくりのカタカナのまわりには、いかにもアメリ彫りらしいネイビーブルーと暗めの赤のラインでチェーンソーが描かれている。タトゥーを入れてしまったということは、マイクとレザーフェイスの付き合いは一生つづく。
トーキョーで自分の携帯電話を持って歩いている外国人レスラーは、たぶんマイクとレジー・ベネットだけだろう。レジーねえさんは江戸川区の外国人登録証を持っているトーキョー在住型プロパー・ガイジンで、マイクは月イチのペースでアメリカと日本を往復している二重生活者型ガイジンだ。
マイクの定宿はJR池袋駅西口のすぐそばのビジネスホテル“N”。電車にも地下鉄にも乗れるし、乗り換えだってできるから、だいたいどこへでも行ける。
7月のトーキョーはそれほど暑くならなかった。山梨の富士吉田と後楽園ホールで試合があったあとポカンと1週間のオフが入った。こういうときはトーキョーでのんびりしているのがいちばんいい。
せっかくまとまった時間がつくれたのだから、といってワイフのティーナさんがフロリダのフォートローダーデールからトーキョーまで飛んできた。マイクのカミさんは、マイクが長い時間を過ごしているトーキョーという街に興味を持ったようだった。
ビギナーを案内するには、やっぱり浅草の雷門あたりがてっとりばやい。浅草のあとはタクシーで上野まで移動して、アメ横を半日観光。ちょっと疲れたら山手線で池袋まで戻ってひと休み。
次の日はJRで渋谷へ出て、駅のそばの映画館でアメリカ版『ゴジラ』を観て、それから原宿でお買いもの。食事はなるべくアメリカ系に頼らず、ヌードル・ハウス(おそば屋さん)か居酒屋でおハシを使って食べること。ティーナさんの来訪の目的はトーキョーのマイクを知ることである。
スーパー・レザーはFMWのリングでついに“レザーフェイス”のマスクを脱いだ。でも、マスクをかぶらなくなってもマイクのプロレスはスーパー・レザーの動きのままになっている。
別人になろうとしているわけではないから、どこかをいじったり演じ分けたりする必要はない。あの怪物マスクをかぶってチェーンソーを振りまわしながら観客席になだれ込んでいって“ウガウガウガーッ”と叫んでいたのはこんな顔の男です――。髪はダークブラウンで、瞳の色は深いブルー。みんなに正体を知ってもらってマイクは清せいしている。
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