なあ、チェーンソー・チャーリーって男を知っているかい――フミ斎藤のプロレス読本#098【Tokyoガイジン編エピソード08】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
スーパー・レザー、というよりも“マイク”はきょとんとしていた。
「チェーンソー・チャーリーさ。チェーンソー・チャーリーがやって来るんだ。チェーンソーをかついでな」
テリー・ファンクは、だれにもいうなよという感じで左手の人さし指を軽く口元にあてながら、うれしそうに秘密のおはなしをバラしはじめていた。
チェーンソー・チャーリー? あんまり聞かねえ名だな。まさかエンジンのかかったチェンソーをブン、ブン、ブーンとやりながらドレッシングルームから飛び出してくるわけじゃあねえだろうな。えっ、ブン、ブン、ブーンとやりながら観客席になだれ込んでいくって? それじゃあ、オレのギミックとまるっきり同じじゃねえか。いったいどこのだれなんだい、そのチェーンソー・チャーリーって野郎は――。
「いったいどんなやつなんです、そのチャーリーって男は?」マイクはテリーにたずねた。
チェーンソーを振りまわしながらそこらじゅうをのしのし歩きまわって観客を恐怖のどん底に突き落としちゃう怪奇レスラーがこの世にもうひとり存在するなんて、スーパー・レザーにとってはそれだけで大問題である。
レザーフェイスのキャラクターそのものはホラー映画『悪魔のいけにえ』からアダプトしたものだけれど、リングの上のスーパー・レザーはあくまでも“マイク”のブレイン・チャイルドだ。
チェーンソーは“殺害”に使用される凶器で、グロテスクなマスクは被害者の頭の皮をはいでつくった“革製品”ということになっている。じっさいに試合で使っている怪物マスクとその他のコスチューム一式は“マイク”のお手製。類似品が現れるのはあまりうれしくない。
「チェーンソー・チャーリー、チェーンソー・チャーリー……」
もういちどそうつぶやくと、“生ける伝説Living Legend”は満足そうに遠くのほうをみるような目をした。“マイク”はそんなテリーを不思議そうな顔でながめていた。
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