“世界のキタノ”が明かす人気シリーズ完結の裏話「ほとぼりが冷めたら『アウトレイジ リボーン』とかいって復活させようかな(笑)」
テレビや映画で長らく縦横無尽に活躍を続け、エンタメ界のど真ん中に鎮座する“世界のキタノ”もついに70歳。そんななか、第18作となる最新作『アウトレイジ 最終章』が10月7日から公開される。人気シリーズの完結編を作ることになった“ある事情”とは?
――人気シリーズの「アウトレイジ」を、今回『最終章』と銘打って完結させたのはなぜですか?
北野:世界的にテロや暴力が蔓延して、エンターテインメントとはいえバイオレンスは肩身が狭くなってきたなと思って。ネタは尽きないし、大友さえいれば続けられるんだけど。
――違うストーリー案もあったということですか?
北野:大友が山王会の会長になったっていいし、香港に行ってイギリスが出てきて国際的な抗争になるって展開も考えたんだけど、ダラダラ続けても俺が死んじゃうからさ。
――そんなことないですよ(笑)。まだまだ観たいです。
北野:まぁ、また違う分野の映画を撮って、ほとぼりが冷めたら『アウトレイジ リボーン』とかいって復活させようかなって(笑)。
――『最終章』では、日本の花菱会に裏切りや騙し合いが渦巻いているのに対して、昔気質の仁義を通す大友が身を寄せたのが韓国の張グループだったというのが印象的でした。
北野:大友は、山王会でも浮いちゃって騙されたりするんだけど、在日の張グループが一番義理人情を重んじていて大友を裏切らない。日本好きの外国人のほうが、日本人より日本の作法に詳しくて大事にしている感じに似てるんだよね。
――警察が裏で抗争の糸を引いていた前作『アウトレイジ ビヨンド』とは違い、本作では刑事の繁田(松重豊)が思い通りに動けず、警察の力が弱まっている印象ですが……。
北野:昔、金正男がディズニーランドに行くために偽造パスポートで不法入国しようとしたときも、逮捕せずに丁寧に送り返しただけだっただろ? 結局、外交や国際問題が絡んでくると、日本の刑法は通用しなくなっちゃうってことと同じだよ。
――『ビヨンド』と『最終章』の間に、『龍三と七人の子分たち』というコメディを撮っていますが、どういう位置づけだったんでしょうか。
北野:『アウトレイジ』を3作連続っていうのもちょっと息切れしそうだったから、一回クッションを置くっていうかね。本当は前からパロディ映画を撮りたかったのよ。2時間のうち、前半の1時間はシリアスなヤクザ映画で、後半の1時間になると同じ出演者で、そのパロディになってるの。ヤクザが脅すつもりで、「てめえ、命はねえぞ!」って言ってたら、バン!って本当に撃っちゃって、「あれ、さっきはうまくいったのに」って今度は慌てちゃうとかさ(笑)。
――なるほど。つまり『龍三~』は、『アウトレイジ』がもしもコメディだったら……というパロディ的な意味合いがあったのでしょうか。
北野:やっぱり、拳銃とかドスとか殴る蹴るの暴力って、なんか笑っちゃうんだよね。お笑いで一度視点を反対側に振ってから『アウトレイジ』を見直すことで、意外と見過ごしていたことに気づけたってのはあるな。
――笑えるといえば、花菱会の西野を演じる西田敏行さんは、現場でかなりアドリブを入れたそうですね。
北野:うん、ずいぶん飛ばしてたね。ほとんどカットしてやったけど(笑)。だって、「あの会長、ジェニジェニ、ジェニジェニって、お前はリトル・リチャードか!」(※)とか言うんだもん。そんなギャグわかるの、俺らの世代ぐらいだろ。カメラ見ながら、俺だけ頭抱えながら笑ってたよ。
――それでも、『ビヨンド』に続いて出演しているのは、それだけ信頼に足る俳優さんということですよね。
北野:ある程度までの役者だと、原田芳雄っぽいとか、松田優作っぽいみたいな“型”に入った演技をする人が多いんだけど、俺の映画にはそういう人は要らないから。その点、西田さんや塩見(三省)さんはさすがだよ。こちらが指示しなくても、自分とカメラの位置をわかっていて演技プランを考えてくれるしね。
*このインタビューは9/26発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
(※)リトル・リチャードは、’50年代から活躍したロックンロールの創始者の一人。「ジェニジェニ」は彼の代表曲のひとつで、日本では’60年代に鈴木ヤスシが日本語カバーしたことでヒットしたため、60代以上で知名度が高い。
取材・文/福田フクスケ 撮影/唐木貴央
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