爪切男×こだま「互いの人生が入れ替わっても大丈夫」 同人サークル出身の作家二人はこれからも書き続ける
『夫のちんぽが入らない』の衝撃から 1年、家族や職場の人たちとの“最果ての地”での日々を描いた待望の第2作『ここは、おしまいの地』を上梓した主婦こだま。
最愛の女性・アスカと過ごした6年間をはじめ、さまざまな女性に振り回された半生を綴った『死にたい夜にかぎって』でデビューした爪切男。
文学フリマの同じサークルで活動していた2人が奇しくも揃って本を出版。お互いの印象や人柄を語り合った。
2月24日に発売した『Quick Japan vol.136』(太田出版)に収録されている爪切男×こだま対談。そこに収まりきらなかった内容を含む“完全版”を、ここに特別公開!
――そもそも、おふたりが出会ったきっかけは何だったんですか?
こだま:文学フリマというものがあると知ったときに、地方住まいで一人では心細かったので、Twitterで「誰か一緒に出てくれませんか?」と呼びかけたのが最初。それに、ネット大喜利をしていた頃から知っているたかさんが応えてくれて、爪さんと乗代雄介さんに声をかけてくれたんですよね。
爪切男:たかさんからは、前から「おもしろい人がいるよ」と聞いていました。僕もネット大喜利をしていた時期があって、その時からこだまさんの名前は知っていたので「あ、あのこだまさんか」と思いました。大喜利のことは話してもいいんでしたっけ?
こだま:ええ、大丈夫です。
爪切男:ネットラジオをやっていたことは?
こだま:それはダメです。あの頃は調子に乗っていたので(笑)。
爪切男:こだまさん、アイドルみたいなラジオをやっていたんですよ。当時、女性で大喜利をしていて、かつ面白い人ってあまりいなかったんです。あと声も可愛かったので、こだまさんは大喜利界のアイドルとしてがんばっていた気がします。
こだま:やめてください(笑)。
爪切男:でも、こだまさんには会う前から妙な信頼感がありましたね。僕、女性と最初に話すときは何がNGワードかを気にするんですけど、こだまさんはそのハードル自体がなくて、なんでも受け止めてくれる人だったので、すごくやりやすかった。
こだま:私はブログを読んだ印象から、爪さんはもっと荒くれ者でどうしようもない人だと思っていたんですけど、実際会ったら礼儀正しくて、ちゃんと常識のある人なんだとわかってびっくりしました。
――こだまさんの一作目『夫のちんぽが入らない』は、たかさん、乗代雄介さんらと4人で組んだサークル「A4しんちゃん」の同人誌『なし水』に掲載された随筆がもとになっているんですよね。
こだま:実はあのとき、最初の原稿ではまったく違う話を書いていたんですけど、爪さんとたかさんから「なめてんのか」「あの話を書け」と脅しの電話がきて。
爪切男:そんな言い方してないでしょ(笑)。いや、文学フリマって、プロ・アマ問わず文章を書いて人からお金をもらう場所じゃないですか。そこで、普段のブログと同じようなものを出したらもったいないと思ったんですよ。全力を出したほうがいいって。
こだま:そのおかげで、もう逃げ道はないと覚悟が決まって、あの話を書こうと思えたんです。この人たちなら、何を書いても受け止めてくれるだろうって。
爪切男:確かに、僕たちが何を書いても、4人それぞれが自分の書きたい物を書けば、ちゃんと一冊の本として成立するだろう、っていう安心感はありました。
こだま:他の3人がおもしろいと思ってくれるものを書かなきゃ、というのが、プレッシャーでもあり、励みにもなっていましたね。
爪切男:だから俺、書き直されてきた『夫のちんぽが入らない』を読んで、こだまさんがここまで書いたんだからと、自分の原稿『鳳凰かあさん』(生き別れになっていた母親と、ブログをきっかけに約30年ぶりに再会したエピソードを綴ったもの)をイチから書き直したんですよ。
こだま:あのとき、メールですごく褒めてくれましたよね。
爪切男:「いきなりだが、夫のちんぽが入らない」という書き出しは、川端康成の『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」を超えたと思う、と送りました。あの一文で完全に持っていかれますから。
すべて書く覚悟をした日
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