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過激な下ネタも人形ならセーフに見える!? 人形研究者が語る映画『パペット大騒査線 追憶の紫影』

 パロディをつぎはぎした邦題。どこかで見たようなロゴデザイン。キャッチコピーは「日本よ、これがハリウッドの相棒だ!」。そんな、各方面から怒られそうな悪ノリ全開の映画『パペット大騒査線 追憶の紫影(パープル・シャドー)』が、賛否両論を巻き起こしながら公開中だ。
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原題とかけ離れた邦題は批判されることも多いが、ここまでふざけているといっそ清々しい?

 物語は、人間とパペット(操り人形)が共存する街で、パペットだけを狙った連続殺害事件が発生。元コンビのおばさん刑事コニー(メリッサ・マッカーシー)とパペット私立探偵フィルが、再び組んで捜査にあたる……というもの。  しかしてその実態は、懐かしの『セサミストリート』を彷彿とさせるパペットたちによるどギツイ下ネタとバイオレンスのオンパレード。全米ではR指定で公開され、その年の愛すべき“最低”映画を決めるゴールデンラズベリー賞では、最多タイの6部門にノミネートされた大問題作なのだ。  しかも驚くことに、本作の監督は、本家『セサミストリート』の生みの親であるパペット界の巨匠ジム・ヘンソンの息子ブライアン・ヘンソン。にもかかわらず、そのあまりにお下劣な内容で『セサミストリート』の公式サイドから訴えられてしまったいわくつきの作品なのである。  そこで以前、ドールモデル・橋本ルルの記事や、『プーと大人になった僕』の解説でもお世話になった、人形研究者の菊地浩平先生に、本作の見どころと、過激なパペット・ムービーが生まれた背景について話を聞いてみた。
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菊地先生の講義は、早稲田大学の学生アンケートで、人文系講義の「面白い」第1位に2年連続で輝いた

本家『セサミストリート』から受け継がれる実験精神

――菊地先生は、古今東西あらゆる“人形”表現を通じて人間そのものについて考える「人形メディア学」を研究していますが、もともとは人形劇がご専門だそうですね。『セサミストリート』といえば正統派の子供向けテレビ教育番組ですが、その関係者がなぜこんな超絶B級映画を作ってしまったのでしょうか?(笑) 菊地:そう思うかもしれませんが、実はそこまで意外でもないんですよ。’18年9月に『セサミストリート』の脚本家のひとりが、作中でルームシェアをしているバートとアーニーの関係をゲイのカップルと想定していたと証言し、それに対して公式サイドが「パペットなので性的指向はない」と否定する騒ぎがありました。 ――そんなことがあったんですか。 菊地:そんなマジレスで否定しなくてもいいのに……とは思いますが、このように本家の『セサミストリート』だって、’69年に始まった子供向け番組としてはかなり実験的な設定を取り入れていたんです。人形の造形だけでなく、そうした実験精神も引き継いでいるという点で、『パペット大騒査線〜』は素直に立派だと思います。 ――菊地先生が思う、本作の一番の見どころは? 菊地:なんといっても、パペット同士のSEXシーンで“アレ”が飛び狂う場面ですかね。あんなの見たことないです。大声では言いづらいですが、正直めちゃくちゃ笑いました! 試写室はシーンとしてましたけど(笑)。
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この2人によって繰り広げられる問題のSEXシーンは必見!

――ド下ネタですからね(笑)。本作は、パペットが人間と共存しながらも二級市民扱いされているという設定で、明らかに人種差別のメタファーになっているわけですが、こうした作品は他にも例があるのでしょうか? 菊地:トニー賞も獲得したブロードウェイ・ミュージカル『アベニューQ』は、まさに人間と人形が共存している世界の物語。ニューヨークの裏路地で、被差別的な扱いを受けてきた者たちが身を寄せ合って暮らしている設定で、本作とかなり近いですね。 というか、『セサミストリート』のデザイナーが参加していて、パペットの造形も似ているので、むしろ本作の元ネタのひとつという可能性もあります。実は、『アベニューQ』でもパペット同士のSEXシーンが有名なんですが、私は断然『パペット大騒査線〜』の“アレ”が飛び交うシーンのほうが好きです! ――かなりお気に入りじゃないですか(笑)。
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人形ならなにをしてもいいのか問題
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『パペット大騒査線 追憶の紫影(パープル・シャドー)』
監督/ブライアン・ヘンソン
出演/メリッサ・マッカーシーほか
配給/パルコ
渋谷シネクイントほか全国上映中

『人形メディア学講義』著者:菊地 浩平
出版社:河出書房新社(茉莉花社)
価格:2700円
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