更新日:2022年10月24日 00:48
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仏像の中に歯や髪の毛!? CTスキャンでわかった運慶仏の内部

CTスキャンで得られた情報から、作者や制作年代を特定

運慶・湛慶作の瀧山寺(愛知県)・聖観音菩薩立像(重要文化財)。X線調査で、口の位置に納入品が確認された。『瀧山寺縁起』には、源頼朝の三回忌供養にあたり、頼朝等身大の聖観音を造って像内に遺髪と歯を納めたと記されている

 仏像内部に仏舎利(釈迦の遺骨)やお経などを納めることは昔から行われていたが、運慶仏は納入品にも特徴がある。真如苑真澄寺(東京都)の大日如来坐像(重要文化財)や光得寺(栃木県)の大日如来坐像(重要文化財)内部には、五輪塔の他に心月輪(しんがちりん)呼ばれる仏の心に例えられる球体が、心の位置に納入されている。  なぜそれがわかるかというと、仏像調査にX線によるCTスキャン(コンピューターによる断層撮影法)が用いられているのだ。そこから得られる情報が、作者や制作年代の特定に繋がることもある。遺髪や歯が納入されていることもあり、発願者の強い思いがうかがいとれる。構造だけでなく、CTは過去の人々の思いも見つけ出す。  真如苑真澄寺の大日如来坐像が例のオークションに出された仏像なのだが、重要文化財に指定するにあたりボアスコープ(棒状の内視鏡)でも調査が行われた。耳孔からボアスコープを挿入し、像内に金箔が押されていることや、鮮やかに色づけされた五輪塔が確認された。  当時の仏師や仏像たちは、まさか何百年後にこうして内部を見られるとは思っていなかっただろう。今回の「運慶展」の展示では収納物についての解説もあるので、外側だけでなく内部も想像しながら見てほしい。

展示期間中に「仮説」をCT調査で解明

興福寺(奈良県)・無著菩薩立像・世親菩薩立像・四天王立像。四天王像が北円堂安置とみる仮説による配置。四天王に囲まれても、負けないほどの存在感を放つ無著・世親像

 今回の展示期間中に、興福寺の無著菩薩立像・世親菩薩立像と四天王立像(国宝)のCT調査が行われる。現在、興福寺では無著菩薩立像・世親菩薩立像は北円堂に、四天王立像は南円堂にと、別々に安置されている。しかし今回の展示では「四天王立像はもともと北円堂に置かれていたのではないか」という仮説をもとに、同じ空間に配置している。  東京国立博物館企画課長の浅見龍介氏はこう語る。 「内ぐりや収納物の有無、細かな造りなどを今回CTで調査します。無著・世親像と四天王像の調査結果を比較し、同じ堂に置かれていた可能性についても検討します。また、3D計測を行い、仮想空間の北円堂内部にそれらの仏像を配置してみる予定です。いろいろなことがわかると思います」  今回の展示で彫刻としての造形の美しさに感動したら、ぜひお寺へ訪れて信仰の対象として大切にされている運慶仏を拝観してみてほしい。博物館とは異なる表情を見ることができるだろう。 取材・文・撮影/鈴木麦
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【興福寺中金堂再建記念特別展 運慶】
会期:2017年11月26日(日)まで ※展示替えあり
開館時間:午前9時30分~午後5時まで
金曜・土曜及び11月2日(木)は午後9時まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
会場:東京国立博物館 平成館
公式サイト:http://unkei2017.jp/
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