雑学

チェコ国外で初の全20点展示が話題「ミュシャのスラヴ叙事詩」って何!?

自由と独立を求めて闘うスラヴ民族を描いた作品群


広い空間に立ち並ぶ圧巻の作品群。「スラヴ叙事詩」の展示スペースは一部撮影可能

 アール・ヌーヴォーを代表する芸術家、アルフォンス・ミュシャ(1860-1939年)の展覧会が、東京・六本木の国立新美術館で3月8日からスタートした。

 パリで活躍したミュシャと言えば、植物や星や宝石と美しい女性を組み合わせた作品が有名だが、今回の展示の目玉は「スラヴ叙事詩」だ。およそ縦6m×横8mの圧巻の大きさで描かれた作品群で、チェコ国外で全20点が展示されるのは今回が初めて。報道関係者向けの内覧会では、あまりの迫力に展示室に入った人々から感嘆の声が上がった。

 「スラヴ叙事詩」とは、50歳で故郷チェコに帰国したミュシャが16年の歳月をかけて描き上げた作品で、自由と独立を求めて闘うスラヴ民族の自信を高めるために描いたもの。スラヴ民族の歴史とチェコの歴史が半々で描かれ、ひとつの作品の中に歴史的エピソードと神話的エピソードが盛り込まれている。

ミュシャの作品が目指してきた「人々の間に橋をかける」という精神


⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1299834

「スラヴ式典礼の導入」では、ヴェレフラット城の門前で、特使が教皇の大勅書をスヴァトプルク王に向かって読み上げる場面が描かれている。右上に描かれるのは、スラヴ語の典礼の導入を支持した寓意的人物たち

 平和主義であったミュシャは、流血や戦闘場面は描かなかった。「戦い」と名のつく作品であっても、武装解除された戦いの後の姿を描いている。中央に描かれる勝利者は「勝利者ではあるが、なぜこのようなすさまじい戦争が行われなければならなかったのか。なぜこれだけの人間が死ななければならなかったのか」という複雑な表情をしている。ミュシャの細やかな表現に注目してほしい。

「私の作品が目指してきたものは、決して人々の絆を破壊することではなく、彼らの間に橋を架けることである。私たち人間が皆よく知り合えば、よりたやすく理解し合い、互いに歩み寄ることができるという希望を常に心に抱かねばならない」と生前に述べていたミュシャ。世界中で民族や国家の対立が激化している現代、改めて見直すべき価値観ではないだろうか。

しなやかな動きと表情が魅力的な四芸術「詩」「ダンス」「絵画」「音楽」。一筆箋やファイルなど、オリジナルグッズの販売もある

 スラヴ叙事詩のほかにも、ダンス、絵画、詩、音楽という4つの芸術をアレゴリー(寓意画)としてあらわした「四芸術」など、アール・ヌーヴォーの逸品も数多く展示され、ミュシャの描き込みの細かさを間近で見ることができる。

取材・文・撮影/鈴木 麦


【国立新美術館開館10周年・チェコ文化年事業「ミュシャ展」】
会場:国立新美術館 企画展示室2E
会期:2017年3月8日(水)~6月5日(月)
開催時間:10:00~18:00 ※毎週金曜日、4月29日(土)~5月7日(日)は20:00まで
休館日:毎週火曜日
観覧料金:一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料
展覧会公式サイト:http://www.mucha2017.jp/




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