雑学

創立100周年の伊豆箱根鉄道がラブライブとコラボ中 手作りの“アイデア勝負”で沿線を盛り上げる

 人口減少に伴う利用客の減少で、第三セクター化したり廃線となったりする鉄道が増えている。2018年4月1日にはJR三江線(三次―江津)が廃線となる。沿線の住民にとって鉄道の廃線は死活問題だ。そんな中、地域と手を結びあの手この手で利用客たちを楽しませ、乗客数を伸ばして盛り上がっている鉄道がある。

人気アニメ「ラブライブ!」とのコラボで全国からファンが殺到


伊豆箱根鉄道。愛称は「いずっぱこ」

 静岡県三島市の三島駅と伊豆市の修善寺駅を結ぶ伊豆箱根鉄道は、前身の駿豆鉄道が1917年(大正6年)11月に事業を開始、今年で創立100周年を迎える。全長約20kmの駿豆線は、地元では「いずっぱこ」という愛称で親しまれている。沿線には三嶋大社をはじめ、世界文化遺産に登録された韮山反射炉、伊豆長岡温泉や修善寺温泉などがあり、見どころは多い。

 現在、伊豆箱根鉄道では人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」とのコラボ企画として、1日乗り放題乗車券&スタンプラリー&フォトコンテストを実施している(2018年3月31日まで)。同アニメは、沼津市の女子高に通う9人の少女たちがアイドルを目指す物語だ。

 この企画では、駿豆線の9つの駅を各登場人物に例え、等身大パネルの少女たちが駅で乗客たちを迎える。スマホアプリ「舞台めぐり」をダウンロードし、9つの駅に設置されたQRコードを読み込むと、アプリ内カメラで彼女たちと一緒に撮影ができるというもの。現在は1日2~11往復で「ラブライブ!サンシャイン!!」のフルラッピング電車「HAPPY PARTY TRAIN」も走っていて、“聖地巡礼”として全国各地から多くのファンが押し寄せている。

観光客だけでなく、沿線住民を巻き込んだ企画も


「コロッケ旅助け」は限定1000枚、駿豆線各駅(原木駅・牧之郷駅を除く)で2018年3月末まで販売中(1020円)。乗車日に限らず、対象店で特典が受けられる

 このほか、「旅助け」という名称の駿豆線1日乗り放題乗車券もある。例えば、みしまコロッケをかたどった枚数限定の「コロッケ旅助け」は、対象店舗で提示すると特典が受けられるというもの。三島名物のみしまコロッケは、6~7月の1か月間しか販売されない貴重な「三島馬鈴薯」を使用したコロッケで、普通のコロッケに比べイモの味が濃厚でしっとりホクホクしているのが特徴だ。

 観光客だけでなく、沿線住民を巻き込んだ企画も豊富に用意されている。

 駿豆線ではサイクリングを楽しむ人のために平日は9~15時、土日祝は7~18時に「サイクルトレイン」を運行。最前列と最後尾に各3台(合計6台)の自転車を、折りたたむことなく車内に持ち込むことができる。伊豆市では2020年の東京オリンピック・パラリンピックで自転車競技2種目が開催され、「自転車のまち」としてのPRに力を入れているのだ。そして、これは沿線住民の「足」としても活用されているのだという。

 このほか、沿線の企業とタイアップした企画も。今年11月10日には、伊豆市下白岩で地元産ブドウのワインを製造している「中伊豆ワイナリーシャトーT.S」とコラボした「中伊豆ワイン電車」が走る予定。ほかには地元のクラフトビールが飲み放題の「ビール電車」や、ハイリキが飲み放題の「ハイリキ電車」なども人気を博している。

天井から床まで手作りの切り絵で埋め尽くされた「ハロウィン電車」


地元の子供たちが作ったおばけが、ハロウィン電車の中を飛び回る

 そして、現在運行中で沿線住民に大きな話題を呼んでいるのが「ハロウィン電車」(11月1日まで運行)。修善寺在住の切り絵作家・水口千令さんや沿線の小学生が作成した切り絵などが車内を飾っている。3両編成の車両の壁だけでなく、床や天井までが手作りの作品で埋め尽くされ、非常に圧巻だ。水口さんの作った100人の魔女の中には、ワサビや干物など地元の名産を運ぶ、思わず顔がほころんでしまうような魔女もいる。乗り合わせたお客たちは感嘆の声を上げ、しきりに写真を撮っている。

天井から床まで、一両すべてハロウィンの飾りで埋め尽くされた

一つとして同じものがない100体の魔女たち

伊豆箱根鉄道の職員さんたちも登場

記念写真を撮りやすいように、ところどころ空きスペースを作っている

 作者の水口さんに話を聞いた。

「駿豆線は自分が子供の頃からずっと使ってきた鉄道なので、強い思い入れがあります。伊豆箱根鉄道の社員の方々がとても協力的で、一緒になって切り絵を作ったり、飾りつけをしてくださったりしたので、みんなで作ったハロウィン電車という気持ちです。13年間紙切りをしてきて、こんなに本気で作業を手伝ってくれた会社は初めてです。優先席には優しいおばけがいたり、撮影スポットにはカメラを持ったおばけもいるので、ぜひ探してみてください! どの魔女やおばけにも、それぞれのストーリーがあるんです」

電車に乗り合わせた地元の子供たちのために、その場で切り絵を作る水口さん。子供たちは興味深げに手元を覗く

 取材途中、ハロウィン電車に乗り合わせた地元の方が水口さんを見つけ、他の乗客たちに「この人が作った切り絵なんですよ!」と嬉しそうに紹介する一幕があり、車内が笑顔に包まれたのが印象的だった。

 10月22日にはハロウィン電車内で、水口さんとアコーディオン演奏者・杉山卓さんのパフォーマンスが行われる。また当日は、三島田町駅や修善寺駅など沿線地域でハロウィンイベントが開催されるため、回遊性を高めるため小学生以下は乗車運賃が無料になるという。

次のページ 
沿線地域も含めて「全体的に盛り上がる」ことで利益を回収する

1
2




おすすめ記事