雑学

仏像の中に歯や髪の毛!? CTスキャンでわかった運慶仏の内部

東京国立博物館に過去最多の22体が集結


運慶のデビュー作、円成寺(奈良県)・大日如来坐像。通常は多宝塔内部に安置されており、ガラス越しに正面からの拝観となる

 史上最大の運慶展が上野の東京国立博物館でスタートし、初日から入館を待つ人の長蛇の列ができた。仏像に疎くても、運慶の名前を聞いたことがある人は多いだろう。2008年には運慶作とされる仏像がニューヨークのオークションに出品、約14億円で落札されニュースとなった。

 運慶とは平安時代から鎌倉時代に活躍した仏師で、「慶派」と呼ばれる仏師集団に属していた。治承4年(1180年)、平家による南都焼き討ちで、奈良の興福寺や東大寺は伽藍と仏像の大半を焼失。父・康慶をはじめとする慶派の仏師たちは、その復興に携わった。父亡き後は慶派一門の長となり、活躍を続ける。武士の時代になり鎌倉に幕府が開かれると、東国武士からも仏像の注文が入るようになる。

 現存する運慶作あるいはその可能性が高い仏像は31体と言われているが、今回の展示では過去最多の22体が集結。普段お寺では見られない角度から、じっくりと鑑賞することができる。

仏像のリアルな表情をつくりだす「玉眼」


願成就院(静岡県)・毘沙門天立像。右手を高く上げ、戟(げき)を持ち、左手に宝塔を捧げる。願成就院は、鎌倉幕府初代執権の北条時政が建てた氏寺

 運慶は玉眼の使い方が非常にうまく、写実性の高さと相まって、存在感の強い生き生きとした仏像を作っている。玉眼は、仏像の目をくり抜き、瞳を描いた水晶・白目の役割の白い和紙や綿・当て木で構成され、それを使用することで目に光が入りよりリアルな表情となる。

 北条時政の注文に応じて造った願成就院(静岡県)の毘沙門天立像(国宝)の見開いた目にも、玉眼が使用されている。はち切れそうな体躯で躍動的なポージングをとり、一点を見据える目が武将神としての毘沙門天の強さをよく表わしている。伝統に縛られない東国の創作が、運慶の独創性を磨いていったと考えられる。

 興福寺(奈良県)の無著菩薩立像・世親菩薩立像(国宝)にも玉眼が使用されている。つぶらな瞳から漏れる小さな光が、逆に深い慈悲を感じさせる。同じ玉眼でも、まったく表情が異なるのだ。

 しかし運慶は後年、如来像や菩薩像には玉眼を使わなくなっていく。悟りをひらく存在の目に人間的な表情は不必要と考えたのだろう。今回の展示では、その違いを見比べることができる。

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【興福寺中金堂再建記念特別展 運慶】
会期:2017年11月26日(日)まで ※展示替えあり
開館時間:午前9時30分~午後5時まで
金曜・土曜及び11月2日(木)は午後9時まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
会場:東京国立博物館 平成館
公式サイト:http://unkei2017.jp/





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