酔いどれサンドマンはほんとうにあのまんまのサンドマン――フミ斎藤のプロレス読本#122【ECW編エピソード14】
サンドマンSandmanとは、子どもたちの目に砂を入れて眠らせるというおとぎばなしの“睡魔の妖精”。まだデビューしたてのころ、イーストコーストのインディー系プロモーターがふざけ半分でつけたリングネーム――ある寝具メーカーの名称――が、そのうちホンモノになって人格をテイクオーザーしてしまった。
サンドマンは、サンドマンに変身するずっとまえからサンドマンだった。ECファッキンWとそこに集まってくる観客は、サンドマンがサンドマンであることをありのまま受け入れた。
おしゃべりに夢中になると、ついつい声が大きくなる。話したいこと、語りたいことはたくさんあるけれど、それがちゃんと相手に伝わっているかどうかわからないから同じことをなんどもなんどもくだ巻いてしまう。
リングに上がったら、なにがなんだかわからなくなるまで暴れてくるだけだ。1日じゅうプロレスのことを考えていたいから、あまり眠らない。もう目がショボショボして起きていられないというところまでふんばっておいて、それから服を着たままベッドにドサッとよこになる。
でも、眠りに落ちると、こんどは夢のなかで新しいハイスパートhigh spotの映像が現れてきて、またすぐに飛び起きてしまう。
ベッドから起きると、またバドワイザーが胃袋に流し込まれる。ビールがなくなったら、また酒屋までひとっ走りしてくるだけのことだ。
サンドマンは1日24時間、プロレスとアルコールにどっぷり漬かっている。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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