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酔いどれサンドマンはほんとうにあのまんまのサンドマン――フミ斎藤のプロレス読本#122【ECW編エピソード14】

酔いどれサンドマンはほんとうにあのまんまのサンドマン――フミ斎藤のプロレス読本#122【ECW編エピソード14】

『フミ斎藤のプロレス読本』#122は、酔いどれサンドマンはほんとうにあのまんなの人だったというエピソード。サンドマンは1日24時間、プロレスとアルコール漬けなのだ(Photo Credit:Linda Roufa)

 199×年

 声がでかい。同じことをなんどもなんどもくり返しくり返ししゃべりつづける。相手が自分のはなしをちゃんと聞いているかどうかをいちいちチェックしつつ一方的にがなり立てる。でも、そのうち自分でもいまなんのことを話しているのかよくわからなくなってしまう。

 1日じゅうビールを飲んでいる。3分ごとにフィルターをちぎって両切りにしたタバコ(銘柄はキャメル)に火をつける。またおしゃべりがはじまる。サンドマンはほんとうにあのまんまのサンドマンである。

 朝起きると、まず近所の酒屋まで歩いていってバドワイザーを半ケース(12本)とアブソルート(ウォッカ)のボトルを1本買ってくる。ブレックファストもしっかり食べるけれど、まず先にその日に消費する分のアルコールを調達しておかないとどうもうまくない。ビールは“痛み止”の薬のようなものなのだという。

 “ニワトリが先か卵が先か”じゃないけれど、これは“プロレスが先かビールが先か”の哲学的なディベートということになるのだろう。サンドマンは、プロレスとアルコールのどちらにも1日24時間、どっぷり漬かっている。

 まずプロレスありきなのか、それとも飲んだくれてしまうのが先決なのか、そのへんのところがあいまいな感じになっている。もちろん、サンドマンの体のなかではプロレスとアルコールが同時にまわっている。

 おしゃべりが一段落すると、長めのゲップをはさんで、酔っぱらいのおじさんは必ずこうつぶやく。

「アイ・ラブ・ディス・ビジネスI love this business(この仕事を愛してる)」

 サンドマンはサンドマンが定義するところのまじめさみたいなものをしっかりと貫いている。だれも気がついていないかもしれないけれど、試合で使っているコスチュームもちょっとずつマイナーチェンジをつづけている。

 缶ビールの飲み干し方や空き缶のつぶし方だって、ケンドー・スティック(竹刀)の振りまわし方だって、ちょっとずつ進化している。

「きょう、リングの上でおっ死んだとしても、オレはハッピーに死ねるよ」

 ずいぶん物騒なことを口走ったりする。1日のなかで“しらふ”でいる時間は1秒もないから、だいたいのコメントは酔っぱらいがいっていること、として片づけておいていい。

 運転免許証とパスポートに記載されている本名はジェームズ・フォリントンで、現住所はフロリダ州タンパ。ほんとうはサウス・フィラデルフィアの育ちだが、縁側で日なたぼっこをしながらバドワイザーが飲みたくてあたたかい土地に引っ越した。

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サンドマンは、変身するずっとまえからサンドマンだった

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⇒連載第1話はコチラ

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