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レジーねえさんの「サンクスギビングデーには七面鳥を」――フミ斎藤のプロレス読本#139[ガールズはガールズ編エピソード9]

レジーねえさんの「サンクスギビングデーには七面鳥を」――フミ斎藤のプロレス読本#139[ガールズはガールズ編エピソード9]

『フミ斎藤のプロレス読本』#139 ガールズはガールズ編エピソード9は、サンクスギビングデーの夜にターキー=七面鳥が食べられないなんてプロレスラーは因果な商売というおはなし。レジーねえさんは「ああ、七面鳥が食いたい」とつぶやいた(Photo Credit: Bill Otten)

 199X年

 サンクスギビングデーの晩に七面鳥turkeyが食べられないなんて因果な商売なのだ。

 11月の第4木曜日は感謝祭。メイフラワー号でプリマス植民地に移住した清教徒の一団が、1621年に最初の収穫を神に感謝する意味ではじめたのが起源とされるキリスト教のお祭りだ。

 食糧が乏しかった時代に野生の七面鳥を食べた習慣が今日までつづいている。

 レジー・ベネットは、かれこれ4年も七面鳥の晩餐をミスってる。そんなもん、たまにアメリカに帰ったときにでも食えばいいじゃないかといってしまえばそれまでだけれど、やっぱりあれは感謝祭の夜にいただかないと意味がない。

 ジャパニーズ・ピープルが正月におせち料理とお餅を食べるように、七面鳥とスタッフィンとマッシュポテトとクランベリー・ソースは暦が運んできてくれる季節の味なのである。

「ああ、ターキーが食いたい」

 レジーねえさんは、うわ言のようにつぶやいていた。きっと、銀座や赤坂あたりの高級ホテルのなかにあるレストランへ行けば、写真にでも撮っておきたいようなピクチャー・パーフェクトなサンクスギビングのディナーをいただけるのだろう。

 その日、全日本女子プロレスの巡業クルーは栃木県芳賀町というところにいた。試合が終わればトーキョーに戻れるけれど、バスが事務所のまえに着くころにはきっと深夜の12時をまわっている。そんな時間に七面鳥をふるまってくれる店なんてないだろう。

 そういえば“TOKYOクラシファイド”(英語のタウン情報誌)には「感謝祭のディナーの予約はお早めに」なんて広告が載っていた。トーキョー・ガイジンだって、11月の第4木曜日の夜には七面鳥を食べたくなるに決まってる。

 けっきょく、レジーねえさんは六本木の“ハードロック・カフェ”をのぞいてみることにした。アメリカのおふくろの味みたいなものにありつこう、なんて甘い期待はもうとっくに捨てた。

 年にいちどの感謝祭の夜である。七面鳥の切れっぱしでも出てくれば感謝の気持ちを持とうと思った。

 ダイニングテーブルの上には“11月25日~28日、サンクスギビング・ディナー・スペシャル・メニュー”と記されたボール紙のカードが置かれていた。レジーねえさんは胸の高鳴りをおぼえた。

「ターキー、ください!」

「本日のスペシャルは、ジャック・ダニエルになっております。ショットでもミックスでも1ドリンク200円とたいへんおトクになっております」

「あ、そう。じゃあ、JDのコーラ割りをちょうだい」

 それから2、3分するとテーブルにジャック・ダニエルのコークハイが運ばれてきた。まあ、食事のまえにちょっとカクテルをひっかけておくのも悪くない。もうすぐ、夢にまでいた七面鳥と再会できるのだ。

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レジーねえさんは静かに目をつぶり…

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