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ブルさん、オサム、シンザキーのニューヨーク物語――フミ斎藤のプロレス読本#137[ガールズはガールズ編エピソード7]

ブルさん、オサム、シンザキーのニューヨーク物語――フミ斎藤のプロレス読本#137[ガールズはガールズ編エピソード7]

『フミ斎藤のプロレス読本』#137 ガールズはガールズ編エピソード7は、ニューヨーク・ニューヨークで暮らす3人の日本人レスラー、ブル中野と新崎人生と西村修のストーリー(Photo Credit: Linda Roufa)

 199X年

 ニューヨーク・ニューヨーク!マンハッタンは世田谷区と同じくらいの大きさだって。そんなところに800万人Eight million peopleがぎっしり住んでいる。

 ビッグシティーというのは、とにかく人口が多いことを指す。地図でみるとマンハッタンは南北が長くて、東西がわりと狭い。地下鉄があって、バスがあって、イエローキャブがたくさん走っている。

 夏はベトベト暑くて、冬は風が冷たい。空気はいつも悪い。

 ブル中野は、街じゅうが1年の終わりを祝福しているホリデー・シーズンに、ひとりでアパートメント探しをしていた。いままでお世話になっていたナッシュビルの家を出て、荷物を全部持ってニューヨークに飛んできた。

 ひとまず手ごろなホテルにチェックインして、そこに何日間か泊まって、そのあいだに友だちに会ったりお買い物をしたりして、そのうちアパートもみつかればラッキー。だいたいそんな計画だった。

 マンハッタンでは青い空なんてなかなかみられない。いつもどんよりと霧がかかったようになっている。乾燥したビル風が顔にピリピリくるのに、道路はどことなく湿っている。

 北に向かって立つと、上下がアベニューAvenueで、左右がストリートStreetだ。セントラルパークが街のまんなかでいばっている。あんまり北に行き過ぎちゃうとハーレムだ。

 ニューヨークを好きになってしまう感覚は、街で遊ぶことに本気になっちゃう衝動と似ているかもしれない。ブルさんはきっとニューヨーク・ニューヨークにハマッたのだ。

 ヴィレッジがあって、イーストヴィレッジがあって、ソーホーがあって……、山崎五紀さんのレストラン“go”はよくわからないけれどあっちのほう。

 迷子になったらタクシーに乗ればいい。WWEの全米ツアーがはじまるのは、年が明けて1月6日から。どこにも行かなくていいし、だれにも会わなくていい。ブルさんはクリスマス・ツリーの街路をゆっくり、てくてく歩いた。

 西村修は、レンタカーのヴァンに荷物を積んで、車でニューヨークまで引っ越してくるつもりらしい。フロリダとニューヨークでは1日24時間の速度がまるでちがう。

 タンパはものを考えるのが馬鹿ばかしくなるくらい空が高くて太陽が暑いけれど、マンハッタンは寒くて空が暗い。でも、プロレスをやるには大都会でつねにスタンバっていたほうがいい。

 新日本プロレスからの帰国命令を蹴ったことで、オサム・ニシムーラはアメリカ人のインディペンデント系レスラーと同じような立場になった。

 オフィスのバックアップがなくなったから手さぐりで前へ進んでいくしかない。ほんとうにヤバくなったら皿洗いでもなんてもやろうと思ってニューヨーク暮らしを選んだ。

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隔週土曜の夜にはECWアリーナで定期戦がある

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