おそろいの赤のブレザーが似合っていたブルさんと北斗――フミ斎藤のプロレス読本#140[ガールズはガールズ編エピソード10]
北朝鮮遠征に参加した選手団は、チャーター便に乗って平壌から名古屋空港に戻ってきた。名古屋から東京までの移動の足は新日本プロレスの大型バス。世田谷・野毛の道場で解散になったあと、ブルさんたちはタクシーに乗って目黒の事務所まで帰ってきた。
ブルさんも北斗も、これからどうしていけばいいのか、なにをどうすればいいのかをいつも考えている。北斗はどうやらプロレスをつづける気になったようだし、ブルさんはブルさんでいろいろなプランを頭のなかでこねくりまわしている。
ブルさん自身がいつも口にしていた「このオンナにプロレス以外、なにができる?」というコメントどおりの展開になってきた。このオンナたちにプロレス以外のことをやらせてはいけない。
先にタクシーから降りてきたのはブルさんで、運転手さんにお金を払って領収書をもらっていたのは北斗だった。ブルさんは髪を立てていないし、北斗はメイクをしていない。
おそろいの赤のブレザーが妙にちゃんとしていて、いかにも凱旋帰国みたいな感じがした。髪の色がブルーとブロンドじゃなかったら「オリンピック選手団だよ」といっても通るかもしれない。
ジャパニーズ・ガールズの闘いは、北朝鮮の人民だけでなくニュージャパンのボーイズ、アメリカのボーイズ、WCWのエグゼクティブたちを驚かせた。
リック・フレアーはいっぺんで豊田のファンになっちゃったし、ホーク・ウォリアーはブルさんとミックト・マッチでタッグを組みたいなんていいはじめた。ジャパニーズの女子プロレスは、いちどナマで観たらだれでもハマッてしまう。
ブルさんと北斗のほんとうのライフワークは、女子プロレスという日本の文化を世界じゅうに布教して歩くことかもしれない。平壌のリングに上がったことで、ふたりがワンセットでWCWの全米ツアーに合流する可能性も出てきた。
ブルさんはニューヨークを恋しがっているし、北斗もアメリカ移住に心が傾きはじめているらしい。
タクシーのトランクからスーツケース類を引っぱり出していると、そのすぐ後ろに黄色いタクシーがもう1台、停まった。なかから出てきたのは、やっぱり赤いブレザーを着た豊田と吉田だった。
ブルさんと北斗は、現役組に「おつかれさまー」と声をかけた。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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