激安から高級へ。新型レクサスLSが高級車で一番になるために必要なこと
さて、5代目レクサスLSの出来はどうだったか?
いまひとつでした……。
「激安ワインを飲んで『最高!』と言ってるオマエに何がかわるのか!」と思われるでしょうが、クルマだけはゼイタクをしておりますので、ソムリエを自負しております。そのソムリエの私から見て、新型LSはいまひとつ。
何がいまひとつかと申しますと、割と全部です。デザインも中身も。決して悪くはないですが、突出したところがない。
思えば、レクサスブランドを北米で確立させた’89年発表の初代LS(国内では初代セルシオ)は、その静粛性や快適性でメルセデスを圧しておりました。「走り始めても何も音がしない! 何も聞こえない!」と、気持ち悪くなるほどでした。しかし5代目LSには、そういう部分がないです。
エンジンは、従来のV8&V8ハイブリッドから、V6ターボ&V6ハイブリッドへとダウンサイジング。燃費は大きく向上しましたが、全体的に走りをスポーティに振りすぎ、快適性がいまひとつです。と言ってもスポーティな走りならクラス世界一かと言うと、そこまでは全然いってない。中途半端なのです。
もちろん、普段電車やバスに乗っているみなさまが乗れば、その鬼のような高級感に圧倒されるでしょうが、ターゲットはゼイタクを知った方々ですので、何かオンリーワンがないと勝負がムズカシイ。あえて言えば安全装備は世界一かもですが、僅差ですし、その分野は日進月歩なので、いつ逆転されてもおかしくありません。
これでお値段は980万から1680万円で、メルセデスSクラスとほぼ同じ。つまり5代目レクサスLSは、「中身はそこそこの割に値段がちょっと高い」ということになるかと存じます。
しかしそれでも、LSはそれなりにしっかり売れるでしょう。なぜなら、もはやレクサスLSはブランドだからです! ブランドものは中身より名前! 「LS買っときゃ間違いねえ」という方が、世界中に大勢いる! これがブランド力というヤツですね。そこまで頑張ったトヨタは偉大なり。
【結論】
「全体的にいまひとつ」ではありますがレクサスLSは攻めてます。デザインでもコンセプトでも、従来の殻を破ろうとしています。その姿勢がイイ! ブランドに頼り切って守りに入ってないトヨタは偉いであります1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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