もし山手トンネルに閉じ込められたとき新型ロールスロイス・ファントムに乗っていたら…
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
東京都心に21cmの大雪が降った1月22日、上野の東京国立博物館にて新型ロールスロイス・ファントムの発表会が行われた。
発表会には滅多に足を向けないのだが、なにせ今回は世界の頂点に君臨する高級車。場所もスゴイということで、いったいどんな世界が待っているのか、この目で確かめて来た。
雪が降り始めた昼過ぎに出発し、首都高で上野へ向かう。上野の博物館に行くのは、おそらく小学生以来である。
駐車場の用意はないので、コインパーキングにクルマを止め、そこからは徒歩だ。クルマの発表会で、駐車場のない会場が選ばれることは滅多にない。さすが世界の頂点に君臨するロールスロイス。
歩いていると、左右に古風で立派な建物が。これも博物館かと思ったら、東京芸大でした。スイマセン、練馬区育ちなもので初めて見ました……。とってもステキです! こちらを卒業して日産のチーフデザイナーになられた前澤義雄さん(故人)という方と、長年対談の連載を持っていたので、「これが前澤さんの母校か」と、目頭が熱くなりました。
熱い目頭のまま会場に到着すると、そこにはドーンと聳える門が。「黒門」という重要文化財で、旧因州池田屋敷表門であるらしい。明治時代は東宮御所正門として移築されのち、高松宮邸に引き継がれ、さらに昭和29年、東京国立博物館の敷地内に移築されたとか。超ステキ!
黒門を入って法隆寺宝物館の方へ進むと、雪が舞う池端に、新型ファントムがたたずんでおりました。
まさかの屋外展示に軽くビビッたが、もうひとつビビッったことがある。先代とぜんぜん見分けがつかないのだ……。
先代ファントムは、それはそれは堂々としたスタイリングで、メルセデスSクラスがお子ちゃま用に思えるほどの威厳を湛えていたが、新型もウリふたつ。「ちょっと顔が違うかも」くらいで、よっぽど目を凝らさないと見分けが難しい。
これでも車体設計、パワープラント、内外装すべて一新されており、ロールス・ロイス専用のオールアルミ製スペースフレームにより、従来モデル比で30%高いボディ剛性を実現しているそうなのですが。
ボディの大きさもほぼ同じ。全幅は30mm拡大され、2m超えの2020mmになったが、全長は逆に70mm縮小の5770mm。ミニバン並みに高い全高も、10mm低くなっている。全体として微妙にシャコタンっぽく見えるのが特徴でしょうか?
プレゼンテーション会場は屋内(法隆寺宝物館)。超細身のスーツに身を固めた主催者の皆様方が微妙な威圧感を与えるなか、ロールスロイス広報のローズマリーさんのステキな説明が始まった。
「別荘は動きません。プライベートジェットやクルーザーも、自宅ガレージには入りません。アート作品も持ち歩くことはできません。でも、ロールスロイス・ファントムは、どこにでも行くことができます」
ス、ステキすぎる! 確かにおっしゃる通り! 杉並区の狭い路地に入るのは、ちょっと大変かもだけど。
ちなみにお値段は5460万円。ロングホイールベース版の「ファントムEWB」が6540万円。先代はそれぞれ5167万円と5995万円だったので、若干の値上げとなっておりますが、6.8リッターのV12エンジンには新たにターボがかまされ、1万㏄並みの大トルクを発生するよう改良されているので、完璧に納得です。
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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