“上手に生きられない人たち”を救うのが青春物語――現役書店員3人が胸を熱くする本とは?
花本:青春とエロって切っても切れない関係性がありますよね。
伊野尾:そりゃあ一番性欲が強い時代だから。
花本:性欲には振り回されましたよね……(遠い目)。
伊野尾:まさにその“性欲に振り回されていた時代”の本というのを持ってきたんですけど。花村萬月の『惜春』。
花本:あーっ、エロそう~!
伊野尾:これは新宿でバーテンのバイトをやってる童貞が、客のおじさんに騙されて琵琶湖のそばにある隔絶されたソープランドで働かされるっていう話です。
●花村萬月『惜春』(講談社)
<理不尽な労働環境を嘆き、風俗嬢との交流に悶々とする。’70年代の雄琴の風俗街を舞台に、風俗店のボーイとして働く童貞青年たちの苦悩と成長を描いた連作短編集。「実はそんなにエロくない」(伊野尾)>
市川:それはまた……。
花本:「童貞がソープで働かされる」っていう時点で生殺し感がすごい。
伊野尾:そこで大人の汚いところを見たり、ソープ嬢のお姉さんといい感じになったりして、でも童貞だからいつまでもモジモジして先に進まないんですよ。今読み返すと「童貞だからって甘えてんな」って思うけど(笑)。シモの話も多いんだけど、きれいな小説なんですよね。
花本:僕は椎名誠の『哀愁の街に霧が降るのだ』がすごく好きで。貧乏な男たちが狭いアパートの部屋に集まって、酒飲んで馬鹿なことを喋ったりやったりするっていうのが、すごく楽しそうに描かれている。そういうのも僕は青春の一つの切り口かなって思っていて。
●椎名誠『哀愁の街に霧が降るのだ』(小学館)
<東京・江戸川区小岩の中川放水路近くにあるボロアパート「克美荘」を舞台に、4人の男たちの共同貧乏生活を描いた長編。椎名誠と仲間たちが、6畳間の狭い部屋で、食べて飲んで語り合う青春の日々を送る>
伊野尾:ホモソーシャル的な関係ですよね。
花本:そう! 最終的に何がどうなる話でもないっていうところにも僕は惹かれるんですよ。売れる小説って大抵何か事件が起こるものだけど、僕はくだらない日常から青春のきらめきを見出したい(笑)。
市川:何歳くらいで読んだんですか?
花本:10代の時ですね。こういうアパートでの生活にすごく憧れました。
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