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「“初体験”を笑ってもらえたことが自信に」話題の作家・爪切男の素顔公開

 デビュー作『死にたい夜にかぎって』がドラマ化されたことで話題の作家・爪切男。今回は都内にある爪氏の自宅にお邪魔して、120分のロングインタビューを行った。 爪切男 彼が歩んできた波乱の人生と、それを切なくも笑いに満ちた文章に昇華する「優しさ」の哲学。「でも、本当の自分はずるくて臆病な、ただの女好きなんです」――。対話の中で語られ始めた、彼の意外な素顔とは。

“恥”をさらし続けて作家になった男

――このたびは本のドラマ化、おめでとうございます。 爪切男(以下、爪):ありがとうございます。最近は関係各所に迷惑をかけないよう、言動に慎みを持って暮らしております。 ――著書の中では、恋人のアスカをはじめ、さまざまな女性との触れ合いが描かれています。自身の女性遍歴を題材にされた理由は? 爪:幼い頃から女性というものに対してすごく憧れがあったんですよ。というのも、僕は幼少期に実の母親から捨てられているんです。祖母に頼んでしわくちゃのオッパイを吸わせてもらっていたくらいですから、母性に飢えてるんでしょうね。もうあらゆる女性が天使に見えてしまう。  そうしていろんな女性にフラフラと吸い寄せられては振り回され……。要するにただの女好きなんですけど、彼女たちとの思い出がなければ、今の「爪切男」という人間は成り立っていなかったと思います。 ――「実の母に捨てられる」というのは相当に衝撃的な生い立ちですが、お父さんのほうもかなり過激な方だったそうで。 爪:親父はすごく厳格な人で、超がつくほどの体育会系でしたね。鉄拳制裁は当たり前で、「男ならどんなに辛いことがあっても泣くな」という教えのもと、さながら武士のように育てられました。だけどそんな親父が、中学3年の秋に飲酒運転と当て逃げで逮捕されたんです。  親父は都落ちした武士みたいになっちゃって、僕は前科者の息子になった。そのときに「人生何が起こるかわからない、信じられるのは自分だけだ」という気持ちが芽生えた気がします。

辛さの中に楽しみを見つけて笑う

爪切男――波瀾万丈の半生にもかかわらず、それを描く爪さんの筆致はあくまでも軽妙です。笑いを誘う文章で読者の心にも希望を残してくれる。 爪:それはきっと親父の教えが生きているんでしょう。「泣くな、辛いことの中に一つでも楽しさを見つけて笑え」。親父の影響でプロレスが好きだったことも大きいですね。どんなに辛い状況でも、それはプロレスラーがリングでやられているようなもの。エンターテインメントの一節だと思えば苦しくないんです。  それに、僕は自分の書いた話を笑ってもらえるのが一番嬉しい。本の中にもある「車椅子女性との初体験」、これはデビュー前にブログで公開した話が基になっているんですが、書いているときは「絶対に叩かれるだろうな」と思ってました。でも予想に反して、読んだ人はみんな笑ってくれた。僕の中で大事な思い出の一つだったので、望んだ形で伝わったことがすごく自信になったんです。 ――正直、ご両親のエピソードだけでもお腹いっぱいなのに、その後に出会う女性たちも負けじと爪さんを振り回していくんですよね。 爪:最高に振り回されましたね。初体験の車椅子女性は冬木弘道そっくりだし、初めての彼女はカルト宗教信者のヤリマン。アスカとは6年間一緒にいましたけど、浮気はされるわ、心の病気で毎晩のように首を絞められるわ、最後にはDJに心変わりされてフラれるわ……。  でもね、本当にいい女だったんですよ。彼女と出会うまでうまく笑えずにいた自分が、こうして笑顔を取り戻すことができたんですから。まあ、その笑えなくなったきっかけも、学生時代に好きなコから言われた「君の笑顔は虫の裏側に似ている」というセリフなんですけどね。しかしあのコも素敵な女のコだった。
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当時の自分は逃げてばかりだった
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