更新日:2022年12月30日 10:32
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是枝監督とリリー・フランキーが語る『万引き家族』の名優たち

圧巻の息子役・城桧吏と3世代の“バケモノ女優”

 リリー演じる治の息子・祥太を演じた城桧吏を、ふたりは絶賛する。 ================ 是枝:とにかく勘がいい。周りの大人をよく見てる。撮影が進むと「このシーンは、このあと切り返しでこう」みたいな撮影のパターンを明らかに読み始めてきたので、「やばい、パターンを崩さなきゃ!」って焦りました(笑)。あるシーンでは、当初彼のアップを撮るつもりはなかったのに、撮らざるを得ないような顔をしてそこにいる。もう、撮るしかなかったですね。 リリー:日々驚異的にうまくなっていって。周りの芝居に自分の芝居を寄せる。芝居の種類を変えてくるんですよ。  是枝作品常連の樹木希林、初参加の安藤サクラ、昨今女優として目覚ましい成長を遂げている松岡茉優など、女優陣の存在感も際立っている。 リリー:世代の違う、3世代のバケモノ女優さんが揃った(笑)。 是枝:うまい役者を集めようと思って集めたので、選りすぐり。しかも技量を見せつけるような演技合戦にはならない。お互いの芝居を反射しながら、いいポジショニングができていました。 リリー:居方かたに空気を持ってる女優さんたちなので、僕が最初にセットに入った時点で、“ずっと前から彼女たちがそこにいる感”が漂ってるんですよ。映画の冒頭がドキュメンタリーに見えるのは、だからだと思う。

リリーにとって「理想に近い家族」

================  ドキュメンタリー番組『NONFIX』出身である是枝監督の面目躍如、実在の家庭にカメラが潜り込んでいるようなリアリティはたしかに圧倒的だ。リリーも相当、役にはまり込んだ様子。 ================ リリー:撮影が終わってからのロス感がすごい。なんにもやる気がしなくて、日々切ないんですよ。  終盤、この一家の重大な秘密が明らかになる。それを踏まえた是枝監督の言葉は、ぜひ映画を観た後にもう一度思い出してほしい。腑に落ちるはずだ。 是枝:“犯罪”で家族をつなげようと思った理由は2つ。ひとつは東日本大震災の後にやたら「絆、絆」って世の中で言われていて、強い違和感を感じたこと。血のつながり以外に広げなきゃいけなかったはずなのに、結局「やっぱり家族だよね」に回帰してしまった世間のムードがすごく気になったんです。もうひとつは、子供を産んだからといって母親みんなが母性を持つわけじゃないってこと。なのに今は「母親はこうあるべき」という抑圧がとても強い社会になっているなと。 ================  リリーは本作で描かれている家族を「自分の理想に近い」と言い切った。 ================ リリー:貧しいんだけど、豊かな感じがするんです。みんなでトウモロコシを食べて、ばあちゃんが発泡酒を飲んでるだけで豊かだと思える。とてつもないものを求めず、身の丈を生きてる。この人たちが日々見てる幸せの風景って、ある意味で僕の憧れなんですよ。 <取材・文/稲田豊史 撮影/田中智久> 【是枝裕和】 ’62年生まれ。『幻の光』(’95年)で監督デビュー。『誰も知らない』(’04年)などで国際的評価を固める。前作『三度目の殺人』(’17年)は日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか6 冠に輝いた 【リリー・フランキー】 ’63年生まれ。イラストレーター、文筆家、俳優など多彩な顔を持つ。『ぐるりのこと』(’08年)、『そして父になる』(’13年)、『凶悪』(’13年)などで多数の映画賞を受賞
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万引き家族
監督・脚本・編集/是枝裕和 出演/リリー・フランキー、安藤サクラほか
配給/ギャガ
6月8日より全国公開

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