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日本の「システムに疑問を持たせない」教育の弊害

かつて、不合理な校則は戦う対象だった

 別の芝居で、百円均一で釣り竿をスタッフが買ってきたことがありました。竿と糸の長さがうまく合わず、俳優が苦労し、スタッフが悩んでいたので、「釣り竿、短く切ればいいじゃん」と言いました。 「そんなことしていいんですか!?」とスタッフは叫びました。  与えられたことをどう料理し、どう受け止めるかという訓練は受けてきても、与えられた枠そのものを疑うという訓練は受けてないというか、禁止されていたんだなあと僕は思いました。  僕はじつは、これは小学校、中学校、高校の校則によって作られた考えだと思っているのです。  6月18日の大阪の地震の後、19日に、中学生か高校生のツイートが流れてきました。それは、余震の可能性があるから親が緊急連絡のために携帯を持たせたら、学校は携帯禁止だからと言われて教師に取り上げられたというものです。  本人がじつに憤慨して書いていました。携帯を持っていくように事前に学校に言ったはずなのに、まったく通っていなかった、こんな非常事態なのに、校則を1ミリの狂いもなく押しつけてくる教師はおかしいと嘆いていました。  僕が中学や高校の時は、校則は戦う対象でした。それは論理的におかしかったらからです。下校時に買い食い禁止と言われて、でも、いったん、家に帰ってすぐに外に出たらカバンを持っていても校則違反にならない、なんてのは、不合理を通り越して笑い話です。  でも、今の中学生に聞くと、みんな当然のように「下校時は自動販売機だってダメですよ」と答えます。制度そのものに対する疑問は、完全に封じ込まれていると感じます。  でね、そんな環境で育った人達が、クリエイティビティだの世界をリードするアイデアなんて持てるはずがないと思うのよ。日本がここんとこ、世界をリードする商品が作れないのも、グローバルレベルの企業が生まれないのも、小学校以来の「システムに疑問を持たせない教育」のせいだと僕は確信しているのです。 ※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて連載中
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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