更新日:2023年03月12日 08:30
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「大人の発達障害」専門外来に予約殺到。受診するのはどんな人たち?

五十嵐良雄院長

五十嵐良雄院長

 診察ではまず、看護師や心理士が小さい頃からの病歴や育った環境、現在の困りごとなどを1時間半ほどかけて聴取し、ASDとADHDに関するチェックリストをそれぞれ記入する。そして、心理検査や「WAIS-Ⅲ」と呼ばれる知能検査を2時間半ほどかけて実施。病院によっては心理分析で有名なロールシャッハ・テストもする。その後ようやく最終診断が出るのだが、そこまでに1か月ほどかかる場合もあるという。 「発達障害の診断が下りた場合、患者さんの意思によりますがADHDに関しては薬物療法があります。ただ、ASDも混在している人が多いので、服薬によって効果があった場合、逆にASDの特性が目立ってくることもあるんです」  一方でASD用の薬はない。そのフォローとしてメディカルケア虎ノ門では「マンスリー・コムズ」と呼ばれるデイケアを行っている。これは自分の特性について理解を深めることが目的で、毎月1回、患者が集まってテーマごとに対処法や意見交換を行うプログラムだ。 「一般の人が思う“普通”と発達障害の人にとっての“普通”は違うということを、まずお互いが知るべきなんです」  カリキュラムでは、それを自覚するための勉強を行っている。途中で通わなくなる人もいるが、毎回70~80人が詰めかけるほど人気だという。それにしてもなぜ今、働く人々は発達障害にこれほど敏感なのか。五十嵐院長はこう語る。 「原因の一つに、働き方の変化があります。PCやスマホが当たり前となり、一人の労働者の仕事量が昔に比べて2~3倍に増えた印象です。多くの業務をこなすにはそれなりのコミュニケーション力が要る。発達障害の方は視覚に基づく文字情報の処理には長けていても、聴覚情報を駆使するコミュニケーションは苦手なことが多く、仕事にも支障をきたしたり、叱責されて傷つく人が多いのです」  利便性とともに生きづらさも増したとは、皮肉な時代である。 【五十嵐良雄院長】 メディカルケア虎ノ門院長。'03年の開院以来、さまざまな精神疾患を抱える患者に対処。近著に『「はたらく」を支える!職場×発達障害』(南山堂)がある ― 大人の発達障害 ―
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