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「がむしゃらに頑張るのはムダ」元巨人・桑田真澄氏が断言する理由

甲子園で優勝するより大切な「人生の勝利投手になること」

――桑田さんはプロになってからの指導についてはどう考えてますか? 桑田:プロ野球では、選手は勝利至上主義の価値観に身を置きます。もちろんスポーツマンシップは問われますが1試合ごと、1年ごとに弱肉強食の厳しい世界を見せつけられます。プロ野球には夢もありますが、その陰には残酷な面もあると思います。  そんな世界だからこそ、若い選手には万全のコンディションで入団してほしい。全てのプロ野球選手はアマチュア野球で育つわけですから、アマチュア野球界では人材育成主義を実践してほしい。  それにスポーツマンシップの価値観の下、練習の質の追求、野球と勉強のバランス、自分と他人をリスペクトする指導理念が根付いたら、若い選手はたとえプロ野球選手になれなくても、一般の社会人として様々な世界で活躍しうると思います。
桑田さん指導者講習

指導者講習にて

<そう語る10代の桑田さんは、PL学園のエースとして甲子園優勝2回、準優勝2回、戦後歴代1位の甲子園通算20勝を挙げ、その後プロでも通算173勝。2007年に移籍した大リーグのパイレーツで、メジャー登板を果たし引退した。> 桑田:僕は投手でしたから、次の試合で勝利投手になるために全力を尽くしてきました。しかし、もっと長いスパンでみて何より大事なのは、人生の勝利投手になるということです。  小学校で世界一、甲子園で優勝投手という称号は素晴らしいと思います。でも、もっと大事なのは人生の勝利投手になることのはずです。僕は甲子園の優勝投手はプロで大成しないというジンクスを知っていました。だから高校一年夏の優勝に満足することなく、プロ野球でエース投手になるための方法を考えてきました。 <決して過去の栄光を振り返ることなく、常に野球を通してどういった人生を送るか、野球界の未来のために何ができるかを見据えての活動は、様々な局面を乗り越えてきたからこその説得力がある。> 桑田:人生を9イニングにたとえると、50歳になった僕の人生はまだ6回が終わった辺りでしょう。客観的に考えて勝利投手の権利はあるかもしれませんが、9回のゲームセットまで何が起こるかわかりません。50歳になって、これから終盤の3イニングをどのように戦っていくか考えているところですね。
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根拠のある努力とは何か
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