更新日:2019年01月25日 17:32
ライフ

覚せい剤“常習犯”カップルの成れの果て<薬物裁判556日傍聴記>

 どうやらこの裁判は、前科持ちの彼氏が所持していた覚せい剤を一緒にやっていたという話ではないらしい。彼女はどのように覚せい剤を入手していたのか。もちろん覚せい剤の入手ルートは、裁判の大きな焦点です。
裁判

※写真はイメージです

弁護人「この覚せい剤というのは、どこから入手したものか、わかりますか?」 被告人「それは言えません」 弁護人「うーんと、で、それは、あの、なぜ入手して使おうと思ったんですか?」 被告人「ああ、それは人間関係が上手くいかなくて、以前付き合ってた彼の浮気が原因で嫌気がさしちゃって、使ってしまいました」 弁護人「どこから入手したか、もう一度聞きますが、覚せい剤はどこで入手したんですか?」 被告人「売人です」 弁護人「売人。それが具体的にどんな売人だとかっていうのは……」 被告人「具体的には言えないんですよ」 弁護人「具体的には言えない!? それはなぜですか? 言いたくない理由を教えてください」 被告人「過去に色々と怖い思いをしたことがあるので、それ以来、名前とかは言いたくないです」 弁護人「じゃあ、そういう思いがあるから、言いたくないということですね?」 被告人「あーはい」 弁護人「入手しようとした動機は、前の交際相手との関係がうまくいかなくて、入手したということですよね?」 被告人「あーはい」 弁護人「使ったのは、場所はどこですか?」 被告人「石神井台のアパート」 弁護人「練馬の石神井台に住んでいたアパート。今はそこのアパートはどうなっていますか?」 被告人「解約しています」 弁護人「使った後に、LINEで覚せい剤を使ったということを、あなたのお姉さんにメッセージを送りましたか?」 被告人「あーはい。そうですね。」 弁護人「どうしてそういうことをしたんですか?」 被告人「混乱してしまって」 弁護人「覚せい剤を使って、おかしくなって、混乱してしまって、LINEで送ったということですか?」 被告人「あーはい。そうです」  読者の方はお気づきでしょうが、彼女の「あー」は口癖です。覚せい剤の影響なのか、裁判中の彼女は終始ニヤけているような表情で、周りの様子がおかしかったのでしょうか。  覚せい剤という泥沼の底無し感はこれだけにとどまらない。この後、耳塚絵里子のさらに衝撃的な事実が判明します。 検察官「今も妊娠中ということですけど、父親は誰なんですか?」 被告人「村上です」 検察官「村上自身も覚せい剤やっていますよね?」 被告人「あーはい」 検察官「そうすると、じゃあ現実的には、その子も、産まれたらどちらも育てられないという感じなんですか?」 被告人「あーそうですね。あーはい」 検察官「妊娠があり得るような状況で、覚せい剤を使用したら、子供にも影響でちゃうかもしれないというのは、わかりますよね?」 被告人「そうですね。妊娠してるとは思わなかったんで」 検察官「じゃあ避妊していたんですか?」 被告人「避妊は最初は……」 検察官「最初はってことは、避妊してない時だってあったワケでしょ?」 検察官「あーはい」  斉藤さんの覚せい剤の裁判の傍聴を読んでいると、束の間の快楽と引き換えに人生のすべてが悪転していくのがよくわかる。次回はここに登場する被告の交際相手であり、子供の父親でもある村上正和被告の裁判を紹介したい。 ※斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中(https://note.mu/so1saito/n/n818bb104e718) <取材・文/斉藤総一 構成/山田文大>
自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す
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