更新日:2019年01月25日 17:33
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出会って3か月で薬物依存になったカップルは更正できるのか?<薬物裁判556日傍聴記>

検察官「よくわからないなんて言う人が、今後覚せい剤をやめられると言えます?」 被告人「年も年だし。産まれてくる子供のために頑張って働いて、仕事さえマジメにやっていれば、薬なんかに手をだしませんから!」 検察官「でもこのときも、マジメに仕事をしていたのに、お金にならなかったから、覚せい剤に手を出してしまったんじゃないんですか?」 被告人「うん。だから、それが今回の失敗点」 検察官「今後もなにかうまくいかなくてストレス溜まることもあると思うんですけど、そういう時はどうしようと思います?」 被告人「お酒でも飲んで気分を晴らします」 検察官「今回はそういうことはできなかったですか?」 被告人「……たまたま覚せい剤があるということで買ってしまいました」 検察官「耳塚さん(前回の記事の被告人女性)とは、これからも一緒に生活していこうとは思われているんですか?」 被告人「耳塚は子供を産む気でいるから。産まれてくる子は自分の子だから。耳塚のことも一緒に面倒を見てやろうと思っています」 検察官「子供がいるので両親で面倒を見るというのは必要なことだと思うんですけど、覚せい剤を使っていた者同士が一緒にいると、また使ってしまう危険が高いということは、あなた自身は認識をしていますか?」 被告人「もうやらない。年も年だし。薬はもうやりませんから」 検察官「気持ちのところはともかくね、一緒にいたら、どっちかがやりたいってなった時に、もう片方が影響されてしまうということはあり得るというふうに思えないですか?」 被告人「耳塚のほうが、かなり薬やったら、ひどい女ですから、絶対にもうやらせません」  先に逮捕された村上の交際相手(耳塚絵里子)は、村上の子供を身ごもったばかり。ちなみに2人の出会いは耳塚の勤務するマッサージ店で、当初は従業員と客の関係です。2人が交際を始めたのは4月で、村上が起訴されたのは同年の7月ということを鑑みると、やはり覚せい剤に溺れて急転直下に現実が転がり落ちていく様が垣間見られます。  村上は「二度と覚せい剤をやらない」と主張していますが、このやりとりが伝えるのは薬物に惑溺した男女の現実といったほうがふさわしいでしょう。検察官も「反省して何より、これからは頑張ってください」という態度にはならず、最後の論告でも手厳しい(というよりは至極もっともな)主張を突き付けます。 検察官「同種前科5犯を有し、いずれも服役しながら、前刑が終了した8年後に覚せい剤を再び使用したというものであり、本件についても単に薬理効果を求めるため、覚せい剤を使用したことが認められますから、被告人に覚せい剤に対する親和性、依存性が認められることが明らかです。再犯のおそれもあります。前述の事情に加え、被告人は本件当時、覚せい剤の使用状況や入手状況については疑うべき事情もあり反省までは認められないと考えられますから、再犯のおそれは高いといえます」 =================  前科を棚に上げての「仕事さえマジメにやっていれば、薬なんかに手を出さない」といった発言や、「(交際相手の)耳塚は薬をやったらひどい女だから、自分の前でやったら警察に通報する」といった、どこか上から目線の村上の言葉が空疎に響く。この法廷劇の主役である村上の言葉から、深い悔恨のような情を感じることはできなかった。 ※斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中。 (https://note.mu/so1saito/n/n95fa77f343e9) <取材・文/斉藤総一 構成/山田文大>
自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す
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