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「日本の自動車ユーザーは世界一高レベルの税金を負担している!」は本当なのか?

清水:私はね、自工会の主張もおかしいと思ってる。確かに日本は、自動車を持ってるだけでかかる保有税は世界一高い。豊田章男・自工会会長はそれを下げろと言ってるわけで、経産省もそれを後押ししてるけど、日本が高いのは保有税だけで、トータルでは他の先進国よりかなり安い。自工会はそれを隠すようなグラフを作ってバラ撒いている。これは一種の情報操作じゃないか?
オートクラブ

右の自工会作成のグラフは、日本の自動車保有税の高さを印象操作するもので取得段階の税が目立たなくなっており、燃料税も省かれている。左の財務省作成のグラフは、取得段階や燃料税も加えていて日本はアメリカ以外の先進国より安いことがわかる

渡辺:まあ自工会は一種の圧力団体で、JA(農業協同組合)みたいなものだから、仕方がないんじゃないですか? 清水:なら、我々ジャーナリストが真実を伝えなきゃいけない。多くの日本人が、日本のクルマにかかる税金は世界一高いって誤解してるけど、実際はそうじゃない。日本はガソリン税や消費税が安いから、トータルではドイツやフランスよりかなり安いし、北欧諸国に比べたら半分以下だったりする。 渡辺:それ、本当なんですか? 清水:本当ですよ。特に軽自動車は、世界的に見ても税金がすごく安い。だから日本は4割が軽自動車になって、地方の公共交通機関は絶滅寸前になり、駅前はシャッター通りになったんだ! 渡辺:軽のせいじゃないでしょう! 清水:私も、軽以外の普通車の保有税を下げるのには賛成だけど、そのぶん燃料税を上げるべきだと思う。持ってるだけならCO2は出ないけど、走ると出るんだから。 渡辺:ガソリン税を上げたら、クルマしか足のない地方の弱者を直撃しますよ! 清水:確かに。人手不足が深刻な運送業界も直撃ですよね。だから実際には不可能だ。ガソリン税を上げられないとなると、保有税も下げられない。財源がないんだから。 渡辺:それでも自動車税や重量税は下げるべきです。年々クルマの価値は下がっていくんだから、それに応じて下げていくべきだ。今は逆でしょう? 13年を超えると自動車税が上がるなんてまったくおかしい! 清水:税金下げろって言うだけなら簡単ですよ! でもそれじゃあ、ガソリン暫定税率撤廃とか高速道路無料化とか言うだけ言って何一つ実現できなかった民主党と同じじゃないですか! しかも古いクルマの税金を下げたら、みんなド中古を手放さなくなって新車に買い替えず、景気には大打撃ですよ。こんな愚策はない。渡辺さんがこの国の首相だったら実行しますか!? 渡辺:僕は自動車ユーザーに寄り添った意見を言ってるんです! 少しでも国をそっちのほうに持っていくべきだ!! 清水:私なら、自分が首相だったらどうするかを考えますね。そして少しでも景気浮揚になる減税策を取る。今なら、60歳以上のユーザーが一定以上の性能の自動ブレーキ付きのクルマを買ったら、補助金+大幅減税。これで高齢者の事故は減るし、技術開発も進んで景気にもプラスになる。ぶつからないクルマ減税だ! 渡辺:それはいいんじゃないですか。今のエコカー減税は矛盾しているから一部廃止して、その予算を振り向けてもいい。 清水:古いクルマへの減税は、25年を超えたら、年間走行距離の制限を設けたうえでみたいな形でしょう。年々自動車税が安くなったら、みんな買い換えないから、自動ブレーキなんか普及しない! 渡辺:いや、自動車税や重量税は下げるべきです! 清水:財源は? 渡辺:そんなの、カネ持ちからたくさん取ればいいですよ! 清水:ポピュリズムだな……。
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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