観光公害が顕在化した原因は日本人の出不精!?
さまざまな問題になっている観光公害だが、観光産業が特需に沸く一方、そこから何の恩恵も受けない人々が受害者となっているようだ。ここに、その弊害が野放しにされる一因となっていることを示すデータがある。
観光庁によると、定住人口1人当たりの年間消費額(125万円)を、旅行者の消費に換算すると外国人観光客8人分、国内観光客は宿泊25人分、日帰り79人分にあたる。つまり、経済的には外国人観光客が8人来れば、定住者が1人住んでいる計算になるのだ。
こうした一種の経済合理性によって膨らむ観光公害を是正すべく、国は対策を急いでいる。観光庁は「目下、現状を認識するべき実態調査を行っているところ。具体的な方策は調査の結果を見てから」(外客受入参事官室)と年度内に観光公害についての調査結果を発表する意向だ。

一方、観光客に対し社会がもっと寛容になるべきという意見もSNSなどで聞かれる。インバウンド評論家の中村正人氏はこう話す。
「訪日外国人は年々、右肩上がりなのに、日本では過去20年で出国者数はほぼ増えていないのです。海外旅行の経験の乏しい人が、日本に来て浮かれる外国人旅行者を冷ややかに見てしまい、些細な影響も大迷惑に感じてしまう面もあるのでは。日本人が海外旅行に積極的に出て、現地の人と触れ合うようになれば、日本にやって来る旅行者の多少の粗相も気にならなくなるのではないでしょうか」
6年前に約束した「おもてなし」を実現するためには、日本人自身がもっと旅行をすべきなのかもしれない。
【中村正人氏】
インバウンド評論家。出版社勤務を経て’04年に独立。インバウンド関連ビジネス全般と各種メディアの編集制作を行うエイエスエスに所属
― ニッポンの観光公害ワースト40 ―
取材・文/奥窪優木 慎虎俊 青山大樹