不倫疑惑をスクープされ大統領になれなかった男――実話サスペンスを主演ヒュー・ジャックマンが語る
スキャンダルは共和党の罠だった?
ジャックマン:ああ、その件についてはゲイリーからも少し聞いていました。政治の裏にはなにか汚いビジネスが起こっていそうじゃないですか?(笑)。「あの不倫疑惑の最中に、共和党の人がジャーナリストに混じって自宅の周りで張り込んでいたような気がする」とゲイリーも言っていましたが、真相は分かりません。
とは言っても、とても興味深いニュースだし、ぜひちゃんとした調査を行ってほしいですね。ただ、映画のメッセージはゲイリーが不倫をしたかどうかという点ではなく、ゲイリーの不倫を問いただす権利が私たちにあるかどうか、彼の不倫は政治に関係があるかどうか、という点です。
もし、あなたが明日心臓手術を受けるとしたら、医者は「あなたの結婚生活はどうですか?」なんて絶対に聞きませんよね? なのに、政治家に対して私たちは、彼らの結婚生活からどんな種類の犬を飼っているかまで知りたがる。それは正しいことなのかーーこれがこの映画の伝えたいことです。
――しかし、スキャンダルが共和党の罠だったかもしれないことは、ジャックマンさんもジェイソン・ライトマン監督もニュースが出回る前に知っていたのに、なぜその話を映画に入れなかったのでしょう?
ジャックマン:私もジェイソンも部分的には知っていましたし、確かに、「実はあのスキャンダルは政敵に仕掛けられた罠で、ゲイリー・ハートが大統領になっていれば今の世界は変わっていたかもしれない……」というストーリーにしたほうがドラマチックだったかもしれません。ですが、ジェイソンは観客にシンプルな答えを用意したくはなかった。
この映画には登場人物の様々な視点が描かれています。例えば、ゲイリーの不倫相手だと報道されたドナ・ライスは大学を優秀な成績で卒業した真面目に働く女性だったのにも関わらず、スキャンダルのせいで、頭のからっぽな金髪美人だという烙印を世間から押されてしまった。まだたったの22歳だったのですよ、彼女は!
この事件を思い起こすとき、ほとんどの人が考えるのはゲイリーの失脚のことでしょう。しかし果たして、ゲイリーの人生のほうがドナのものよりも大事なのでしょうか? ゲイリーの妻や子供の気持ちは? ゲイリーに尽くしたキャンペーンスタッフの落胆は? 色々な視点をジェイソンが盛り込んだ理由は、この不倫疑惑を冷静に見つめてほしいからなのです。
――本作で描かれた女性たちの視点は、1987年というよりは現代の問題を映し出しているようにも思えました。
ジャックマン:ジェイソンとプロデューサーのヘレン・エスタブルックは女性の視点を男性のものと同等に描こうとしました。実は脚本は、#MeToo運動やトランプ大統領が大統領選に出馬する前に既に出来上がっていたのですよ。ちょうど撮影中に#MeToo運動が起こり、この映画で描かれている女性の視点とあまりにも重なるので、驚きましたね!
――本作がアメリカで公開されたのはちょうど去年の11月の中間選挙中でしたが、アメリカ人はどのようなリアクションをしたのですか?
ジャックマン:あるレビュー記事に「この映画は素晴らしいけれど、人々の役に立つ物語ではない」と書かれてあって、それはちょっと違うんじゃないかな、と思いました。ジェイソン・ライトマンも私も、映画は答えを用意すべきメディアだとは思っていません。
私たちは自分たちの世界に対していつも疑問を抱いていますよね? しかし、明確な答えなんてない――。この作品はそんな疑問に焦点を当てて議論を誘う――。観客にこう考えろ、と押し付けるわけではなく……。
【フロントランナー】
2月1日(金)~TOHOシネマズ 日比谷他全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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