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「松井府知事ならバンクシー、消すんちゃう」 大阪のバンクシー作品探しルポ<グラフィティの諸問題を巡る現役ライター・VERYONEとの対話>第2回

ヴェリーさんに案内され、グラフィティ・ライターの生態を垣間見る

 午後に、某所でヴェリーさんと待ち合わせることになっていた。今も残るというバンクシー「作品」、そして今は現存しない、かつてヴェリーさんが発見したという「作品」があった場所に案内してもらう予定だ。集合場所で待機している間、今日の会うのは初めてではないが、今回の取材内容が取材内容だけに、ほんの少しだけ緊張していた。なぜなら、彼はこのバンクシー騒動にも、そして現役のグラフィティ・ライターとしてバンクシー自体にも批判的なのである。 「どうも」  約束の時間を少しすぎた頃、ヴェリーさんが待ち合わせの場所に現れた。 「もうバンクシーは見ましたか?」 「いえ、まだです。合流してから行こうかと思って」 「じゃあ、行きましょうか」  淡々と案内してもらう。道すがら、いろんな話をしてくれたが、それはおいおい書いていこう。まず最初に案内されたのは、バンクシーの名前がかすかに残っているステンシルがある場所だった。ずいぶん前から、ここに存在していたらしい。消える前の写真を見せてもらうと、確かにバンクシーの「作品集」などにある彼の名前と同じステンシルのように思える。

ヴェリーさんに最初に案内された、現存するバンクシーのステンシル。この写真では下から2段目で、ほぼ消えかかっている

かつてのバンクシーのステンシル 写真提供/VERYONE ※転載厳禁

 パパっと撮影して、次の場所に移動する間、ヴェリーさんの「お仲間」と遭遇した。 「バンクシーの作品って、〇〇と△△以外にまだ残っているっけ?」  とその人に聞いてくれるヴェリーさん。 「うーん。××が一緒にやってたって言ってたけどなぁ。けど、かなり前のことでしょ」  やはり、バンクシーが2003年頃(正確な来日時期は諸説あるようだ)に来日したときに、大阪でも活動していったのは、彼らの間では知れ渡っているらしい。  次に案内してもらったのは、すでに消されているというネズミのステンシルが描かれていた某所の電柱。ヴェリーさんがかつて自分で撮った写真と見比べながら、電柱の下のほうを指差して、「ああ、ここにかすかに痕跡が残っていますね」と教えてくれるので、「あ、ホントだ」と触ってみる。  するとヴェリーさんが「犬がションベンを引っかけてるようなところですけどね(笑)」と私の行動をツッコむ。「確かにそうですよね」と私も笑う。

今回撮影した、すでにバンクシーのステンシルが消されている電柱。かすかに痕跡が残っているようにも見えるが、上書きされたものの痕跡かもしれない

かつて存在していたバンクシーのネズミのステンシル 写真提供/VERYONE ※転載厳禁

 ここで、かねてから「秘めたる趣味」として「落書き」「ステッカー」「グラフィティ」を撮影してきて思っていた疑問をぶつけてみた。 「グラフィティを撮影していると、『書く』人たちの行動パターンみたいなものが見えてくる気がしているんですよ。路地裏とか、ビルの壁なら、『ああ、ここの自販機に上って書いたんだな』とか」 「そうですね。僕もメインストリートとかではなく、ついつい路地裏を歩いちゃうかもしれませんね(笑)」  まだ数度しか会ったことがないからかもしれないが、ヴェリーさんは非常に慎重に言葉を選びながら話をするタイプだという印象がある。特に私がメディアの人間だということもあるのだろう。多くを語らないし、決定的なことは語らない。おそらく、これまでのさまざまな危険な目にあった経験からきているのだろうと思う。

VERYONEがEDWINのお店とコラボしている作品

 そして、どこかでゆっくり話をしよう、ということになり、移動することに。その途中、ヴェリーさんがさまざまなお店から依頼されて書いたグラフィティも紹介してもらったり、「ああ、こんなところにもありますね」とライター目線での解説をしてもらったりした。途中、あるグラフィティを見つけたヴェリーさんが言った。 「このコとは一緒に海外に行ったこともありますよ」 「このコ」というからにはきっと年下なのだろう。何気なく、「へぇ、どんなコなんですか?」と聞くと、「いや、まぁ、詳しくは言えないですよ」とやんわりと、それ以上の質問を制せられた。それはそうだろう。だが、こんなに慎重な人を相手に、このあとの取材はうまくいくだろうか……。
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バンクシーの作品集に載っていた写真とほぼ一致
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