更新日:2019年06月10日 20:33
エンタメ

2000人の中国人が自由が丘に集結、カオスに__準特急久保田の珍バイト従軍記

 カネない、芸ない、何もない……。だけど「ラクして稼ぐバイト探しの時間だけはあるんです」と話すのはお笑い芸人の準特急久保田。これまで経験したアルバイトのなかには、一般人にはあまり知られていない、世の中にそんな仕事あったの? という不思議な内容も含まれている。  そんな彼の珍バイト体験談を合計3回に渡ってお届けする。第1回目は、家電量販店にまつわる謎すぎる仕事だ……。
準特急久保田

これまで数々の珍バイトを経験してきた若手芸人・準特急久保田

パソコン抽選販売で中国人の行列を統制するバイト

 大手家電量販店では定期的にパソコン抽選販売なるものが行われている。「半額で限定200台販売!」などお得なイベントが多くかなりの数の客が殺到するとか。その大多数が中国人の転売ヤーや彼らに依頼されて並んでいるホームレスばかり。  その中には、割り込みやゴミをまき散らすなど、近隣に迷惑な動きをする人も少なくなかったという。そんな現場を統制するのが久保田の仕事だった。 「スタッフ同士は無線でやり取りするのですが、その際、客をコードネームで呼んでいました。日本人はA、中国人はZ、ホームレスはK。人が大勢集まると、何か揉め事が起きそうなものですが、KはZから依頼されているので両者がもめることはありません。一方で、Aから“迷惑行為をしている人たちをなんとかしてくれ”と強く言われてしまうことも多いんです。そんなAをなだめることが大変でした」  当初は大勢のKとZをまとめるのは面倒だなぁと思っていたが、途中から「待てよ、KとZがいるおかげでこの高額バイトが生まれているんだよな……」と気付いた久保田。「これ、並んでいるの全員Aだったら、俺、存在しなくていいんだもんな」と悟りを開き始め、最終的にはKとZに対して「ありがとう!」という気持ちが芽生えたそうだ。

ハイソな街・自由が丘が騒然…

 ある日、現場が自由が丘にある店舗だったときのこと。「このハイソな住宅街にいつものようにZ(中国人)とK(ホームレス)が2000人も来ちゃったら一体どうなるんだろう」と不安を抱いていた久保田だが、その予感は的中する。
自由が丘

ハイソな雰囲気の自由が丘(Photo by Adobe Stock)

「すでに大量の人が集まっていましたが、区画の狭い街なので住宅街まで列が伸びてしまっているんですよ。捨てられたゴミを拾いながらふと曲がり角を見ると、ズラリと並んだZとKの大群がどんどん出てきたんです。“これは昔、元気が出るテレビで見たやつだ!”ってなって。Twitterでも『自由が丘がとんでもないことになってる』とかで話題になっていましたよ」  なぜかその日は、Z以外の外国人も多数並んでいたという自由が丘の住宅街。あっけにとられていると「なあなあ。これ、なんなん?」と金髪の女性に話しかけられた久保田。そして顔を見ると、芸能界の大先輩。要素が多すぎて初めて会った大先輩に挨拶もできなかったという。  朝6時から開店の10時まで4時間働いて日給9000円のこのバイト。久保田は2年ほど続けたらしいが結局、Aからのクレームが相次いで抽選販売自体、中止になっているそうだ。
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通行人にチラシを“見せる”バイト
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元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion

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