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「不法在留外国人の麻薬取引」をイラン人被告が明かす<薬物裁判556日傍聴記>

今回の判決は?

 判決は以下。 裁判官「被告人に対する刑は懲役8年、罰金300万円というものです。もっともこれまで勾留されていた日数のうち、210日については刑が執行されるさいには、すでに刑を受け終わったものとみなして、懲役8年の刑から差し引かれることになります。罰金300万円を支払うことができない場合は1日1万円に換算して、更に刑務所に入ることになります。つまり全額支払うことができない場合は、さらに300日間刑務所に入るということになります。それから没収の関係では、あなたが持っていた覚せい剤、大麻、コカイン、MDMAについては没収したうえ廃棄処分となります。それから本件密売による犯行による収益は、検察官が主張していたとおり、965万円と認定しましたが、そのうち、当時のあなたの自宅から見つかった、現金151万4000円は、まさにその収益にあたるので、これを没収します。残りの813万6000円については追徴金として支払わなければなりません」  裁判官は上の判決を述べ、続いて量刑の理由について説明するのですが、その最後をこう締めくくります。 「こういった類いの犯罪が、経済的に割に合わないとうことを自覚させる為に300万円の罰金を課すこととしました」  これは、これまで紹介した薬物事案の法廷では言われなかったことで、こうした申し渡しも、事件の重大性を読み取るポイントと言えるかもしれません。              ***  被告の行為はまったく肯定できない。ただ、この事件、もしアジジが日本人で、ジャバドも日本人だとして、警察(検察)がジャバドの取り調べなしに、アジジの裁判が結審することはあるものなのだろうか。当然そう言ったことまで議論されての裁判員裁判だろうが、何か苦いものが残った。つくづく「裁判員」というのは大変な役割だ。金を稼ぎに来日し、法を犯して稼いだ金は全て没収。挙げ句8年の服役と罰金刑というのは、自業自得とはいえ救いがない。もちろん国籍関係なく、薬物の売買に関わって幸せな未来があろうはずはないのだが……。  特筆すべきは、被告が覚せい剤を売った245日の期間、11人の客が236日買いにきていたという事実だ。覚せい剤を使い切るたびにアジジを訪ねるゾンビのような中毒者たちの幻影が浮かんだ。 <取材・文/斉藤総一 構成/山田文大 イラスト/西舘亜矢子>
自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す
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※斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中 https://note.mu/so1saito/n/nb6bde5f57745
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