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「不法在留外国人の麻薬取引」をイラン人被告が明かす<薬物裁判556日傍聴記>

 薬物事案の裁判を556日間傍聴し、法廷劇の全文を書き起こしたという斉藤総一さん執念の手記。今回の被告はイラン国籍のカリム・アジジだ。  大麻であれ覚せい剤であれ、日本国内で薬物所持で逮捕された際「外国人から買った/渡された」と答える日本人は多い。その一方で、売った側の外国人におかれた状況や発言に触れる機会はほとんどない。今回の法廷は多くの日本人にとっては顔のない「不良外国人」の実態が垣間見える点で興味深い。  これまで紹介した単純所持の裁判とは違い物々しい罪名の、裁判員裁判である。  罪名は以下だ。 罪名:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止をはかる為の麻薬および向精神薬取締法の特例等に関する法律違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反、出入国管理及び難民認定法違反              ***

斉藤総一さん

※プライバシー保護の観点から氏名や住所などはすべて変更しております。

薬物を236回売ったイラン人

 今回は裁判の佳境、検察の論告から紹介します。 岡原検察官「(前略)。今回の裁判の対象となっている事件は不法残留中の被告人が、カネを稼ぐため、覚せい剤などの密売事業を営むとともに、当時の被告人方および違法薬物の保管のため、倉庫として使用していたマンションの1室で、密売用の覚せい剤や大麻などを違法薬物を大量に所持していたという事件でした」  マンションの一室を拠点に麻薬の売買をしていた。この後、証拠をもとにした具体的な密売内容が明かされます。法廷では覚せい剤が一般に通常どのような単位で売買されるのかも明らかになります。 「今回の密売期間は起訴されているだけでも、平成27年1月30日頃から同年10月1日までという約8ヶ月間、日数にして245日間の期間にわたっていました。その間に被告人は11名の客に対し、少なくても236回もの多数回覚せい剤などを密売しておりました。1回あたりの覚せい剤の取引量、取引金額は各客よりけりではありますが、最小単位の覚せい剤1袋1万円から多いと15袋10万円まであり、1袋約0.1gとすると、覚せい剤0.1gから1.5gまでの量になるようでした。その結果被告人起訴されたこの約8ヶ月だけでも、少なくても覚せい剤合計1341袋、量にして128g以上を密売し、少なくとも965万円を売り上げました。被告人は覚せい剤の密売事業を単独で行っていたため、売上は全て自己の収入になっており、相当額な利益を得たものと考えられます。このように被告人は今回起訴されているだけでも約8ヶ月間という比較的長期にわたり、236回にもわたり覚せい剤などを密売し、128g以上もの覚せい剤を現実に社会に拡散させたものですから、その影響は大きく、非常に悪質な犯行だと言わざるをえません。そして被告人は、少なくとも965万円という密売による違法収益をあげていたわけでありますから、その反社会性は極めて強いと言えます」  覚せい剤だけでなく、被告は他にも2種類の大麻、コカイン、MDMAなどを所持していました。それらをどのように密売していたのか。 検察官「被告人は他人名義の携帯電話10台、違法薬物保管のためのマンションを1室、2台の他人名義の車を使い、犯行が発覚しないように慎重に密売をおこなっていたからこそ検挙されることなく密売を継続できた」
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反論の余地はないが、「酌むべき事情」も
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※斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中 https://note.mu/so1saito/n/nb6bde5f57745





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