トンデモ医療にダマされないための“信用していい情報源”
世間に出回っている「トンデモ医療」情報。ダマされてお金を取られるだけではなく、健康や命までも奪われてしまう可能性もある。また反ワクチンなどの思想は、自分だけではなく社会全体に病気を蔓延させてしまいかねない。
トンデモ医療に騙されないために、どのような情報を信じたらいいのか? 前回の記事に続き、医師で薬剤師でもあり、米国国立衛生研究所(NIH) で感染症の研究をしている峰宗太郎先生に聞いてみた。
――トンデモ医療に騙されないために、どんなところから情報を入手したらいいでしょうか?
峰宗太郎先生(以下、峰):健康・医療に関する情報を調べるときにはまず、複数の公的な情報にあたることをお勧めします。ここで注意しておきたいのは、医療機関であっても、個人や私設病院の情報は『公的』ではないということです。
日本において公的情報のトップはやはり厚生労働省をはじめとする国の機関が出している情報です。
例えば、がんの情報なら、国立がん研究センターの運営する「がん情報サービス」、感染症の情報なら国立感染症研究所のサイトなどが信頼できます。
小児科や妊婦さんのことは国立成育医療研究センターがいいですね。その他、各地域の保健所のホームページなども役に立つでしょう。
次に、日本医学会という日本最大の医学系の学会があります。その分科会にあたる学会が出している情報は、多くの研究や論文、長い時間をかけて培われた治療法に基づくもので、たいへん信用できます。
分科会に属する学会は、日本医学会のホームページから探すことができますが、それぞれの学会での個別の情報提供のほか、ガイドラインという標準的な治療の仕方なども公開されているところが多くあります。気を付けてほしいのは、日本医学会の分科会になっていない学会は玉石混交なので注意が必要なことです。
もしインターネットで上記以外の場所から情報を得たい場合は「検索したい項目 + ac.jp」または「検索したい項目 + go.jp」などで公的機関や大学などの学術機関の発信する情報を検索してみるといいかもしれません。
テレビ、新聞、雑誌、SNS などの情報は、残念ながら無批判にはほとんど信用できないと考えていいと思います。実際には正しい情報も流れていますが、大げさなものや、偏ったものなどが混じりこんでいますので、それらを見分けるのは至難の業になりますね。
――よく、がん治療などで「標準治療」を拒否してトンデモ療法にハマってしまう人がいます。「標準治療」とはどういう意味なのでしょうか。
峰:「標準治療」はガイドラインや健康保険で認められている「王道の」治療法です。例えばがんであれば、手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法を組み合わせている場合が多いですね。
「標準」というと「普通の」とか「平凡な」という「平均的な」雰囲気を感じてしまうと思いますが、実際にはそうではなくて「最もたくさん検討されて」「他の治療法と比較されても生き残ってきた」「エリート治療」であることが多いのです。
そしてまた、つねに医学は進んでいますので、つねに挑戦を受け続けている「チャンピオン治療」でもあるんですね。さらに、標準治療はもっとも行われているため、現場も慣れていますし、副作用とその対処法などもよく知られており「安全性が高い治療」でもあると言えます。
「先端医療」ときくと、最新の医学・科学の力が集結された非常に良く効く治療というイメージがうかぶかもしれませんが、実際には「標準治療を目指す『若い』治療法」であることがほとんどです。
ですから、病気になってしまった時には、まずは標準治療をしっかり受けられるかどうかがとても大事なのです。
「新説の医療・治療法」「代替医療」「反ワクチン」……などを信じる前に、一度、標準的な治療はどんなものか、また、それらに挑戦する治療がどの程度実証されているものなのかを客観的に述べる情報にも目を通しましょう。偏った意見だけを鵜呑みにするのは大変危険です。
「公的」でない情報は信じるな
「標準治療」は「平均的」ではなく「最も安全な治療法」
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ライター・編集、少女マンガ研究家。スタッフ全員が何らかの障害を持つ会社「合同会社ブラインドライターズ」代表。著書に著名人の戦争体験をまとめた『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハツガサ)などがある
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