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イオンシネマ車いす騒動、必要だった“合理的配慮”とは?欧米の映画館との大きな違いも

 車いすインフルエンサーの中嶋涼子さんがSNSに書いたイオンシネマでの出来事が大炎上しました。いつも行っている映画館のプレミアムシートで映画を鑑賞したところ、見終わったところで支配人が来て、「この劇場はご覧の通り段差があって危なくて、お手伝いできるスタッフもそこまで時間があるわけではないので、今後はこの劇場以外で見てもらえるとお互いいい気分でいられると思うのですがいいでしょうか」と告げに来たというもの。
ユニバーサルデザイン

筆者が観に行った映画館

 これに対してSNSで、まずイオンシネマに対する批判が持ち上がり、イオンシネマからは2024年3月16日に「弊社従業員による不適切な対応に関するお詫び」という謝罪文が公開されました。  しかし「このような問題は、アメリカではまず起こらない」と語るのは、ユニバーサルデザイン(誰もが使いやすいデザイン。UD)に30年前から取り組む、株式会社ユーディットの関根千佳さんです。2024年4月から、障害者に対する「合理的配慮」の提供が公的機関だけでなく一般企業も義務化されます。欧米の映画館やシアターの車いす対応などについて取材しました。

「車いすごと持ち上げさせるのは危険」など猛烈な批判も

 改めて車いすインフルエンサーの中嶋さんの一件を振り返ると、支配人の「今後はこの劇場以外で見てもらえると」という対応を受けて、これまで何度も手伝ってもらってその映画館で観ている中嶋さんは「なんかすごく悔しくて悲しくてトイレで泣いた」そうです。  しかし、SNS上では中嶋さんに対して、「クレーマーだ」「車いすごと持ち上げさせるのは危険だ」「やってもらって当たり前だと思うな」などと猛烈な批判が飛び交うようになりました。  後日、この件についてイオンシネマと中嶋さんの間でお話し合いが持たれ、解決したようです。

そもそも「合理的配慮」とは

 そもそも2024年4月から、一般企業でも義務化される障害者に対する「合理的配慮」とは何でしょうか。改正障害者差別解消法が定める基準によれば「物理的環境への配慮」「意思疎通への配慮」「ルール・慣行の柔軟な変更」とあります。  また、事業規模や財務状況などに応じて、企業側の「負担が過重」な場合は合理的配慮の義務は除かれるとありますが、具体的な内容は規定されていません。その名の下に、スタッフは障害者に依頼されたことは必ず従わなければいけないのでしょうか。車いすユーザーが1人ならまだ対応できても、いっぺんに5人来たら、10人だったら?「それはやってられないよ」と多くの人が感じるでしょう。  この問題で、「どうすればいいんだ」と困っている人は多いのではないでしょうか。これについて、前出の株式会社ユーディット関根さんはこう語ります。 「合理的配慮の前に、本来は事前的改善措置とよばれる環境整備があるべきです。日本の場合、2000平米以下の民間の建物やオフィス、商店はアクセシブルにする法律はありません。つまり中小企業や個人商店のようなところほど、インフラが整っていないのに、合理的配慮を求められると人力での対応を強いられる仕組みなのです。しかしアメリカでは、建物やWebサイトを新規に作るときには、使いやすく・移動しやすくすることが義務なのです」
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欧米では30年以上かけてインフラ整備
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ライター・編集、少女マンガ研究家。スタッフ全員が何らかの障害を持つ会社「合同会社ブラインドライターズ」代表。著書に著名人の戦争体験をまとめた『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハツガサ)などがある

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