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福山雅治、全盲役を好演『ラストマン』はどこまでリアルなのか? 視覚障害の当事者たちに聞く

 福山雅治さんが全盲の捜査官役を務める『ラストマンー全盲の捜査官ー』(TBS系)の放映が4月23日より始まり、現在(5月1日)第2話まで放映されている。初回視聴率は14.7%で民放連ドラ1位と好発進だ。
日曜劇場

日曜劇場「ラストマンー全盲の捜査官」※画像はTBS公式サイトより

 障害者の役というと「一生懸命生きて頑張っている人」といった描かれかたをされることが多く、「障害者ポルノ」と呼ばれて非難されるようになったが、最近は『ヤンキーくんと白杖ガール』のように、リアルを伝える物語が増えている。今作はどうか。 『ラストマンー全盲の捜査官ー』は、FBIから期間限定で来日した皆実広見(福山雅治)が、護道心太朗(大泉洋)とさまざまな事件を解決していく物語。警察組織には障害者に対する先入観を持つ人が多いのだが、それを皆実が爽快にぶち壊していく。彼らをギャフンと言わせながら問題を解決していく爽快さがあり、とても楽しめるエンタメ作品になっていた。番組は音声ガイドもついていて、視覚障害者も存分に楽しめたようだ。  ドラマで表現されたシーン、あれ、どこまで本当なのだろう? 筆者が代表を務め、視覚障害者が活躍する「合同会社ブラインドライターズ」に話を聞いた。

そばを食べるシーンに興味津々

「まさか、“推し”が白杖を持っているところが見られる日が来るなんて!」と語ったのは、直美さん。彼女は主に右上だけが見えている弱視。福山雅治の大ファンで、彼のライブに行きたくて1人で移動できるよう訓練した。目下の目的はドラマで使用している同じ白杖を買うことらしい。  第1話の冒頭で、皆実がそばを食べているシーンがあった。ここがまず印象深かったそうだ。 「おそば、ハードル高いですよね。目が見えないと、おそばがそば猪口に入らない。番組の音声ガイドで『男はそばちょこを持った左手にそばを当て、こぼさないよう器用に食べる』って説明していて、そうそう(そばちょこに)触れば分かるよねって」(直美さん)  聞いてみると、視覚障害者には、意外と「食べやすいもの」「食べにくいもの」がある。基本的にひとくちサイズのものは食べやすいが、お寿司はお醤油のつけ加減がわからないこと、箸で掴みづらいことから苦手な人が多いらしい。

アテンドは両腕を前からつかんで…

 それから注目されたのは、アテンドのシーン。護道に皆実は「エスコートしてください」と頼む。すると護道は皆実と向き合い、両腕を前から掴んで「1、2……」と引っ張ろうとするのだ。ユニバーサルマナーを知っている人にとっては「そんなことするの?」と驚きのシーンだが、実はけっこうあるあるらしい。  先ほどの直美さん、そして全盲の夫と2人暮らしで、トイレットペーパーの芯を覗いているような視野の弱視という昌美さんと、滋賀県長浜市で鍼灸治療院を営んでいて、物の動きがわかる程度の弱視のよりこさんはこう語る。 「両肩掴まれるの、あるあるですよね」(直美さん) 「あるある。いきなり手をつながれたこともあります」(昌美さん) 「白杖を持たれて、ここに段差があります、トントン、とかね」(よりこさん)
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白杖を勝手に触るのはNG!
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ライター・編集、少女マンガ研究家。スタッフ全員が何らかの障害を持つ会社「合同会社ブラインドライターズ」代表。著書に著名人の戦争体験をまとめた『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハツガサ)などがある

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