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高校野球のスコアを数えて日当2万円!? 新聞社と売れない芸人の蜜月関係

選挙の開票を望遠鏡で覗く

 とある政令指定都市の市長選。双眼鏡を手に、開票作業が行われている体育館へ久保田は向かう……。 「体育館に入ると後方にマスコミ用の席があるんです。そこから双眼鏡で開票作業を覗いて、見えた名前を電話で新聞社に伝えるというバイトをしていました。開票作業は速いので、“石原!”、“三田!”と名前だけ連呼していました」  開票から確定までの数時間でバイト代は2万円。交通費は別支給でしかもタクシーでOK。久保田にとっては稼げるバイトだったが、ラクなことばかりでもなかったそうだ。 「体育館には冷房が付いていないので汗で双眼鏡のレンズが曇ってしまい、名前が見えないんですよ。でも見えないからといって無言だとプレッシャーをかけられるんです。周りには同じバイトをしている人たち(※久保田とは違う新聞社に雇われている)がいたので、その辺から聞こえる名前をオウム返ししていました」  あまりにも投票されていない候補者がいると、なんだか可哀そうになってくるので、たまに名前を言ってあげていたとか。新聞社も「え、本当に?」とびっくりしていたみたいだが……。 準特急久保田 以上、合計3回に渡ってお届けした準特急久保田の珍バイト従軍記。なぜこんなにも不思議なバイトが芸人には回ってくるのか。久保田はこう話す。 「平日の昼間にこんな仕事する暇な人間って売れない芸人くらいしかいないんですよ」  じつに簡潔なメカニズムである。<取材・文/國友公司、撮影/藤井敦年>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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