神足裕司さん、車椅子のハワイ旅。VRで思い出の書店へ「幸せすぎて泣いた」
神足さん自身は今回の旅をこう振り返る。
「発病前は本当にあちこち飛び回っていた。仕事でもプライベートでも。一年の4分の3は家にいなかったんじゃないかな。だから、『もう一生分、十分に旅には出た』……そう考えて諦めようとしていた。ボクがまだ自力で車椅子を動かせる能力があれば……話すことができれば……平衡感覚がもうちょっと備わっていれば……
いろいろな複合体の障害で、なにかを諦めかけていた。家族はそれでもいろいろチャレンジはしてくれていたが、自分自身の思い切りがでなかったのだ。
ここ1年、いままでに増して入退院を繰り返すようになって、くも膜下のリハビリはちょっとずつでも進んでいるようにも思えていたけれど、結局、実際の身体能力は下降気味。
本当に自由がきかなくなる前に、自分で行きたい場所を記録に収めたいと考えるようになった。それはいままでの思い出の場所の記録であると同時に、ボクの脳の代わりをしてもらおうという試み。
すぐ忘れてしまう、いつか本当になにもわからなくなってしまうかもしれないという怖さの中でささやかな抵抗。
そして、新しい思い出も家族や仲間と作れる。
今回の旅は今まで以上に幸せに満ちていた。こんなに幸せでいいのかと思ったぐらい。
障害なんて忘れるぐらい、ごく当たり前に接してくれる見ず知らずの人たちと同行の知人たちが普通の旅を作ってくれた」
【前編の記事】⇒要介護5の神足裕司さん、車椅子でハワイへ。誰もが自然に手伝ってくれるハワイ
【神足裕司】
1957年、広島県生まれ。コラムニストとして週刊SPA!などに連載をしながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開、朝日新聞デジタル、RCC中国放送のウェブサイトや介護ポータル「みんなの介護」などで連載中。
復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)、『コータリンは要介護5 車椅子の上から見た631日』(朝日新聞出版)
<取材・文/鈴木靖子>
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『父と息子の大闘病日記』 新しい日常を築いていく過程を父と息子がそれぞれの立場からつづる |
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