「女は体で仕事取ってこい」ハラスメントで男女共に苦しむ「表現の現場」の実情
「時代とともに表現が変わり新しいものが生み出されるように、表現の育まれる現場も更新されていかなければなりません」
こんな決意とともに、『「表現の現場」ハラスメント白書2021』が3月24日に公表された。
これは、アーティストや作家でつくる「表現の現場調査団」がインターネットを通じて行なったアンケート調査の結果を分析したもので、写真や映像、演劇や漫画、デザインといった表現の世界におけるハラスメントの実態を浮き彫りにしている。
調査に協力した1449人のうち、1195人が「(何らかの)ハラスメントを受けた経験がある」と回答。セクハラ経験は1161人、パワハラ経験は1298人、ジェンダーハラスメント経験は1042人と、いずれも1000人を超え、797人が「その他のハラスメント経験がある」と答えている。また、学生時代のアカハラ経験者も376人いた。
表現の現場に横行するハラスメントについて、調査に協力した評論家の荻上チキさんは、「企業や学校、家庭や地域など、他の領域で起きているハラスメントと構造的には同型」と指摘しつ、表現の現場ならではの特徴をこう分析する。
「表現の世界の特徴として、技法や評価の抽象度が高いために、指導時のコミュニケーションにおける非対称性が高まりがちであること。また、適度な『抑圧』があって、はじめて創造性が増すのだという、あまりに古めかしく、また根拠のない言説が根強いことがあります。これらを背景に加害行為が指導のために必要であることのように行われ、放置されています。また、『この業界は特殊だから』『これくらいしないといい作品はつくれない』といった言説も、さまざまな被害を隠蔽してしまっている」
白書にまとめられた、生々しい被害の実態を少し紹介しよう。(※一部、編集部がリライト)。
・個展のレセプションパーティで酔った客が、明らかに故意に股間にワインを溢し、私含む女性作家たちにそれを拭かせた(30代、女性、美術作家)
・ライブハウスで演奏する際に、見知らぬ女性から体をむやみに触られる事例が多いです。お客様なので強く言えません(30代、男性、作家)
・教育現場にかかわる男性美術家から「作品のポートフォリオを見てあげる」「プロジェクトでアシスタントの仕事をあげる」という名目で呼び出され、望まない性行為を求められた(20代、女性、美術家)
・館長から密室でキスを求められたり、身体を触られた。断ると突然態度が変わり難癖をつけて左遷させられた(50代、女性、文化施設勤務)
・泊まりがけの現場があれば、立場が上の同性の先輩にさえ取引先の男性に枕営業をするよう勧められたり、飲み会ではキスされたり、抱きつかれたり。拒めば心が狭い人間扱いされたり(20代、女性、写真家)
表現の現場に横行するさまざまなハラスメント
セクシャル・ハラスメント
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