具体的にどのようなテキストを読めばいいのでしょうか。あるとき小説家の恩田陸さんが私に「木下順二の『夕鶴』を音読している」と言っていましたが、優れた作家は音を重視します。あなたも手始めに『夕鶴』を音読してみるといいと思います。 　ところで、難しい本には2種類あります。第1は、内容がデタラメなものです。こういう本は読むだけ時間の無駄です。第2は、内容が積み重ね方式になっているものです。基礎知識がないと、字面だけを追っていても内容が理解できない本は、入門書をまず読まなくてはなりません。本当は、中学校と高校の教科書や学習参考書を読むと基礎力がつくのですが、社会人にとってこういった本は退屈です。 　新書本には良質な入門書が少なからずあります。あなたの周囲に読書家がいるならば、その人にあなたが関心を持つ分野について入門に適切な新書を紹介してもらうといいと思います。近所に大規模書店があるならば、書店員に尋ねてみるのもいいでしょう。書店員は評判のいい入門書について、良質の情報を持っています。 　友人に読書家が見当たらず、自宅や職場の近所に大規模書店がない場合は、新聞の書評に目を通すことをお勧めします。そして、書評で紹介された本のうち、あまり難しくないと思われる本を購入するとよいでしょう。 　読書に関しては、図書館で借りるよりも、自分で買って読んだほうが、内容が記憶に定着します。 ★今週の教訓……優れた作家は音を重視します’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数