TARO氏
先週のエリザベス女王杯は、スミヨン騎手が騎乗したラッキーライラックが制覇。同馬に騎乗するのは初めてだったが、鮮やかな差し切り勝ちを決めた。
このような、いわゆる“乗り替わり”で結果を出すケースが、最近の競馬では特に増えている。かつて乗り替わりというと、「●●騎手が降ろされた」というようなネガティブなイメージを持たれがちだったが、昨今の競馬界では日常茶飯事のことなのだ。
今週末は京都競馬場でG1・マイルチャンピオンシップ(以下マイルCS)が行われるが、乗り替わりが当たり前になった最近の競馬の中でも、特に乗り替わりが目立つ印象のレースだ。実に出走馬の
半分以上。17頭中12頭が乗り替わりとなっているのである。
<マイルCS出走馬の乗り替わり(枠番順)>
1 ダノンキングリー 戸崎→横山典
4 レッドオルガ 福永→岩田望
5 インディチャンプ 福永→池添
6 フィアーノロマーノ 北村友→藤岡康
7 ペルシアンナイト シュタルケ→マーフィー
8 プリモシーン 福永→ビュイック
9 クリノガウディー 戸崎→藤岡佑
10 アルアイン 北村友→ムーア
11 カテドラル シュタルケ→武豊
12 モズアスコット 岩田康→和田
13 タイムトリップ 藤岡康→幸
17 レイエンダ スミヨン→ルメール
騎手をヤジるくらいなら特徴を知るべき
主な馬たちでもこれだけ乗り替わりがあると、もはや騎手の特徴を知らずに馬券を買うことはできないだろう。場外馬券場でも競馬場でも、とりわけファンの非難の対象となるのは騎手である。しかし、騎手の文句を言っているようでは馬券では勝てない。ましてネットの掲示板に悪口を書くなど言語道断。ハッキリ言ってしまえば、騎手がどう乗ろうが我々にはどうすることもできない。騎手によって技術も違えば性格も違う、若手ならともかく家族がいれば無茶もしたくないかもしれない。文句を言う前に特徴の一つでも知っておくべきだろう。いうなれば、騎手を知るということは、我々が馬券を買う上でのストレスをなくすことでもあるのだ。
例えば今回、
モズアスコットに騎乗する和田騎手は、積極的に前に行くこと、内を突くことも厭わないファイター系のジョッキーだ。かつてテイエムオペラオーとのコンビでは、”シャー!”という雄叫びが話題になったが、今でも「オラオラ~」という声が聞こえてきそうなくらいのファイト溢れる闘魂騎乗が持ち味である。
ダノンキングリーに騎乗する横山典騎手は、JRA屈指の天才肌のジョッキーで、鮮やかに逃げたかと思えば、追い込むこともある。また馬群を捌いての抜け出しもありという、確かな腕で我が道を行くアーティストタイプだ。
インディチャンプに騎乗する池添騎手は、いわゆるリーディングを獲るようなトップジョッキーではないが、オルフェーヴルでの3冠制覇など、とにかく大一番に強く現役屈指のG1勝利数を誇る。野球でいえば4番というよりは6,7番あたりにドンと構え、打率は低くても30本くらいホームランを打つ助っ人外国人のイメージだ。
その他の騎手たちも個性派揃いだ。
アルアインに騎乗するムーア騎手は世界的な名手だが、寡黙な仕事人タイプ。3年前にモーリスに騎乗し天皇賞(秋)を制した際は、勝利騎手インタビューも早々に、飛行機があるからと立ち去った姿は印象深い。常に表情を変えない、ジョッキー界の笑わない男である。だが、もちろん腕に間違いはない。
日本人騎手の中で
笑わない男といえば、
ダノンプレミアムに騎乗する川田騎手だろうか。淡々と語る勝利騎手インタビューはもはやお馴染みだが、今や押しも押されぬトップジョッキーだ。とにかく積極的に位置を取りに行くスタイルは見ていても頼もしい限りで、今週末は先頭でゴールを駆け抜けて笑顔を見せてくれるだろうか。
グァンチャーレの松岡騎手は、今年ウインブライトで香港のレースを制した際には、馬上で流ちょうな英語を披露し話題となった。普段はどちらかといえばオチャラけた印象もあるが、実はしっかりしている、中堅の穴ジョッキーだ。
マイスタイルの田中勝騎手は、“カッチー”の愛称で親しまれているが、池添騎手とは反対で、大一番ではほとんど来ない騎手だ。しかしながら、油断していると忘れた頃にダートで穴をあけることが多く、野球でいえばたまに代打で出て来て意外性を発揮する控え選手のような位置づけだろうか。したがって、どちらかといえばマイルCSというよりはそれ以外のレースで怖いタイプだろう。
是非マイルCSでは、そんな個性豊かな騎手たちにも注目してみてほしい。