更新日:2023年04月27日 10:30
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純烈、紅白2年連続決定! ~純烈物語「白川が体感した石灰まみれの熱唱」

路上プロレスに呼ばれて……

 工場プロレスとは、スーパー・ササダンゴ・マシンが所属するDDTの十八番である路上プロレスの一つ。この団体は、通常のリングだけでなくありとあらゆるシチューションで試合をやってしまう。  本屋から始まり、2万坪もある広大なキャンプ場、廃墟、資材置き場、マンション、モノレールの中、無観衆の東京ドーム全域、親会社であるサイバーエージェント社内……と基本、どんなところでやってもプロレスの試合として成立させてきた。  路上だからリングはおろかマットさえも引かれておらず、路上へダイレクトに叩きつけられる。それでも大ケガを負わぬ受け身の技術を備えているところが、プロフェッショナルたるゆえんなのだ。  2013年5月29日、純烈はこの路上プロレスによばれて参加することとなった。その年の7月にDDTは両国国技館でプロレスとアーティストのコラボ興行を企画。  それを盛り上げるべくこの日、純烈がミニライブをおこなうというものだった。場所は東京都大田区昭和島にある宮地鉄工所。現・代表取締役の宮地大輔氏がDDTをよく観戦していたことから、2010年3月に初めて工場の敷地内を路上プロレスに提供する。 「DDTの後楽園大会のリングに酒井一圭さんが上がられて『純烈も両国で歌いたい!』と宣言すると、大社長(高木三四郎=DDTの世界一大人げない社長兼プロレスラー)が『DDTの洗礼を受けないと両国には上がれない!』みたいなこと言ってニヤニヤしながら見ていたんですけど、急に『鉄工所で路上プロレスだ!』って言い出して。マジで聞いてなかったんで『俺は何も聞いてないぞ!』って野次を飛ばしました」(宮地社長)  純烈が参加したのは、3度目の工場プロレス。当然、敷地内は小林旭のCMよろしくゴツい重機や山積みの鉄骨が点在する。プロレスラーの習性として、そこにあるものは使う。それを許容する寛大さがなければ、実現しない。

フォークリフトに乗せられ工場プロレスのミニライブに登場した6人編成時代の純烈(写真提供/Extreme Party)

 イベントは純烈のミニライブからスタート。フォークリフトに乗って登場したメンバーがトラックの荷台をステージとし、町工場をムード歌謡で包み込んでいると案のじょう、高木が登場。団体の社長という権力を振りかざし「両国に出たかったら俺たちを倒してみろ!」と、どや顔で無理難題を叩きつけた。  こうなると、当然のごとく駆り出されるのはプロレス経験者の酒井。3対2対2の3WAYマッチ(3チームが同時に闘う形式)に組み込まれてしまったわけだが……それだけでは済まないのが阿鼻叫喚状態と化す路上プロレスの恐ろしいところ。  鉄工所には、熱い鉄の温度を冷ますための石灰が置いてある。操業から時間が経過たとはいえ、それでも200℃はあるとされている。  屈強なプロレスラーたちは、その石灰さえも凶器として使用。スコップですくうや、敵めがけて浴びせるのだ。裸体でそれをかけられるや「熱い!熱い!」と絶叫しながらコンクリート上をのたうちまわる。  観客は距離を取って自分の身を守るが、そこに酒井だけでなく純烈のメンバーたちが次々と巻き込まれていった。200℃の石灰を浴びたムード歌謡グループは、たぶん世界初。  頭からステージ衣装まで真っ白けのけ。かつて、前川清がボールペンのCMで「あ~あ、真っ黒けのけ」と歌っていたのに、よりによって純烈はその真逆をいくという、恩人に対しあるまじき行為をしてしまった。
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元力士の力量をいかんなく発揮
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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